そんなときに候補となる漢方薬の一つが越婢加朮湯です。
越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)は、関節リウマチや湿疹などに用いられる漢方薬です。
とくに漢方では、「熱」と「余分な水分」が一緒に存在している状態を考えるときに候補になります。
ただし、同じ「膝が痛い」「関節が腫れる」という症状でも、冷えて痛む人、体力が低下している人、むくみやすい人、血流の滞りが中心の人では選ぶ漢方薬が変わります。
この記事では、越婢加朮湯の特徴、生薬、向いている体質、注意点、他の漢方薬との使い分けを、薬剤師・中医薬膳師の視点からわかりやすく整理します。
- 越婢加朮湯は「熱感+腫れ+水分停滞」が重要なキーワードです。
- 漢方的には比較的体力がある「実証」寄りの人に使われることがあります。
- 麻黄と石膏を中心に、熱をさましながら水分代謝を整える方向に働く方剤です。
- 冷えて痛むタイプや胃腸虚弱タイプでは別の漢方薬が合うことがあります。
- 麻黄・甘草を含むため、持病や併用薬によっては注意が必要です。
漢方は病名だけではなく、「冷えているのか、熱を持っているのか」「体力があるのか、弱っているのか」「水・血・気のどこに偏りがあるのか」をみて選びます。
ほどよい堂では、薬剤師が中医学の体質分析を行い、漢方・薬膳・腸活まで含めて整理します。
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無理に商品購入を勧めるものではありません。
越婢加朮湯とは?「熱と水」を同時に考える漢方薬
越婢加朮湯は、「越婢湯」という処方に蒼朮を加えた漢方処方です。
漢方では、身体に余分な水分がたまり、そこに熱や炎症が加わっているような状態に用いられます。
中医学的に表現すると、湿熱(しつねつ=余分な水分と熱が停滞したタイプ)や、関節に熱を伴う熱痺(ねっぴ)のイメージに近い状態です。
- 関節が腫れている。
- 触ると熱っぽい。
- 赤みを伴う。
- 水がたまったように腫れる。
- 汗が出る。
- 尿が出にくい、または水分代謝の乱れがある。
- 比較的体力がある。
つまり、単なる「痛み止めの漢方」と考えるより、「熱を持って腫れている痛み」を一つの重要な目安として考えると理解しやすくなります。
越婢加朮湯の効能・効果
ツムラ越婢加朮湯エキス顆粒(医療用)の添付文書では、次のような効能・効果が記載されています。
「浮腫と汗が出て小便不利のあるもの」の次の諸症。
- 腎炎。
- ネフローゼ。
- 脚気。
- 関節リウマチ。
- 夜尿症。
- 湿疹。
ポイントは、病名だけを見るのではなく、「浮腫」「発汗」「小便不利」という身体の状態まで含めて記載されていることです。
これは漢方の「病名だけで処方を決めない」という考え方ともよく一致しています。
越婢加朮湯を構成する6つの生薬
ツムラの医療用越婢加朮湯では、1日量7.5gの製剤中に、6種類の生薬から作られた乾燥エキスが配合されています。
| 生薬 | 配合量 | 漢方的な役割のイメージ |
|---|---|---|
| 石膏(せっこう) | 8.0g | 強い熱を冷ます方向に働く生薬です。 |
| 麻黄(まおう) | 6.0g | 体表の邪を発散させ、水分代謝を促す方向に働きます。 |
| 蒼朮(そうじゅつ) | 4.0g | 余分な「湿」をさばく方向に働きます。 |
| 大棗(たいそう) | 3.0g | 胃腸を守り、処方全体を調和させます。 |
| 甘草(かんぞう) | 2.0g | 処方を調和させ、筋肉の緊張などにも関わる生薬です。 |
| 生姜(しょうきょう) | 1.0g | 胃腸を守りながら処方全体を調整します。 |
越婢加朮湯では、石膏と麻黄の組み合わせが特徴的です。
さらに蒼朮を加えることで、水分停滞への対応を強めています。
中医学で考える越婢加朮湯|「湿熱・実証」タイプ
① 証を組み立てる
越婢加朮湯が合いやすい代表的なイメージは、表・熱・実+水湿です。
- 表=比較的身体の表層、皮膚や関節などに症状が現れている状態。
- 熱=赤み、熱感、炎症などがみられる状態。
- 実=比較的体力が保たれている状態。
- 水湿=余分な水分が停滞し、腫れやむくみがみられる状態。
② なぜ痛みや腫れが起こるのか
中医学では「不通則痛」、つまり巡らないところには痛みが生じやすいと考えます。
関節周囲に余分な水分である「湿」が停滞し、さらに熱が加わると、腫れ・熱感・赤み・痛みが出やすくなります。
ほどよい堂では、このような状態を「単なる痛み」だけではなく、水分代謝・循環・炎症の偏りとして考えていきます。
③ 治則・養生
漢方的な方向性としては、清熱=余分な熱をさますことと、利湿・利水=余分な水分をさばくことが中心になります。
越婢加朮湯のクリニカルパール|臨床家はどう使っている?
クリニカルパールとは、経験豊富な臨床家が実際の診療経験から得た「処方選択のヒント」のようなものです。
ここから紹介する内容には、添付文書上の承認効能以外への臨床応用も含まれます。
自己判断での治療を勧めるものではなく、漢方処方を考える際の参考情報としてご覧ください。
新見正則先生の見解では、日常生活には大きな問題がなくても、「スポーツをもう少し気持ちよく行いたい」というような関節症状に越婢加朮湯を考えることがあるとされています。
スポーツを積極的に行う人は比較的体格がしっかりしている場合が多く、越婢加朮湯が適する「実証」のイメージとも重なります。
スポーツなどで関節を酷使し、「腫れ・熱感」がみられる場合は一つの判断材料になります。
坂崎弘美先生の見解では、小児の鼻閉に越婢加朮湯を使用することがあるとされています。
また、虫刺されによって患部が大きく腫れ、熱を持っているようなケースにも応用されることがあると紹介されています。
「熱を持ってパンパンに腫れる」という状態は、越婢加朮湯を理解するうえで非常にわかりやすいイメージです。
棚田大輔先生の見解では、痔核など明らかな器質的異常がみられない肛門痛に、越婢加朮湯と小建中湯を併用して改善した症例経験が紹介されています。
これは一般的な自己治療を勧めるものではありませんが、「痛みの場所」だけでなく、痛みの性質や体質をみて漢方薬を選ぶ考え方を示す一例です。
松田邦夫先生の見解では、関節痛に防已黄耆湯だけを使用して十分な反応が得られない場合、越婢加朮湯を組み合わせて考えることがあるとされています。
一方で、胃腸が弱い人では越婢加朮湯を慎重に扱うという考え方も重要です。
「むくみ中心なのか」「炎症・熱感が強いのか」という違いが、防已黄耆湯と越婢加朮湯を考える際のヒントになります。
長嶺荒人先生の見解では、熱痺による痛みは「実際に患部が熱を持って腫れている」「炎症がある」「スポーツや仕事で関節を酷使した」といった特徴を持つとされています。
このような熱痺では、越婢加朮湯が代表的な候補となり、石膏によって熱を冷ますイメージで考えます。
また、麻黄+石膏で熱をさましながら水分代謝を促し、蒼朮によってさらに「湿」をさばくという処方構成として説明されています。
「熱い・腫れる・水っぽい」が3つそろうほど、越婢加朮湯らしい状態と考えやすくなります。
越婢加朮湯・防已黄耆湯・桂枝加朮附湯の違い
関節痛やむくみに使われる漢方薬は一つではありません。
とくに重要なのが「熱いのか、冷たいのか」「実証なのか、虚証なのか」という違いです。
| 漢方薬 | 体質・証のイメージ | 特徴 |
|---|---|---|
| 越婢加朮湯 | 比較的実証。 湿+熱。 | 腫れ、熱感、赤み、水分停滞を伴う関節症状。 |
| 防已黄耆湯 | 気虚+水湿。 | 疲れやすい、汗をかきやすい、むくみやすいタイプ。 |
| 桂枝加朮附湯 | 陽虚=冷えタイプ。 | 冷えると痛む、温めると楽になる関節痛。 |
| 疎経活血湯 | 血虚+瘀血。 | 慢性化した痛み、血流の滞りを伴う痛みを考えるとき。 |
| 薏苡仁湯 | 湿による筋・関節症状。 | 比較的慢性的な関節痛・筋肉痛などを考えるとき。 |
熱く腫れる → 越婢加朮湯タイプ。
むくみ+疲れやすい → 防已黄耆湯タイプ。
冷えると痛む → 桂枝加朮附湯タイプ。
実際にはこれほど単純ではありませんが、漢方選びの入口として覚えておくと便利です。
関節痛があるから越婢加朮湯、と病名だけで決めるのが漢方ではありません。
舌・便通・胃腸・冷え・発汗・むくみ・睡眠・疲労などを合わせて「証」を組み立てます。
痛み止めと漢方薬はどう考えればいい?
関節痛では、ロキソプロフェン、ジクロフェナク、セレコキシブなどのNSAIDsが使用されることがあります。
NSAIDsは炎症や痛みを抑えるうえで重要な薬ですが、使用する人の年齢、腎機能、胃腸の状態、脱水、併用薬などによって副作用リスクが変わります。
そのため、「西洋薬か漢方薬か」という二者択一ではなく、必要に応じて適切に組み合わせることが大切です。
漢方薬を始めたことを理由に、医師から処方されている鎮痛薬・抗リウマチ薬・ステロイドなどを自己判断で減量・中止することは避けてください。
とくに関節リウマチでは、関節破壊を防ぐための標準治療が非常に重要です。
越婢加朮湯の副作用・注意点
「漢方だから副作用がない」というわけではありません。
越婢加朮湯には、麻黄と甘草が含まれています。
麻黄による注意
麻黄には交感神経を刺激する成分が含まれるため、体質や併用薬によっては、不眠、発汗過多、頻脈、動悸、精神興奮などが現れることがあります。
とくに循環器疾患、重症高血圧、排尿障害、甲状腺機能亢進症などがある場合は、医師・薬剤師への確認が重要です。
甘草による注意
甘草を含む製剤を長期間使用したり、甘草を含む複数の漢方薬を重ねたりすると、偽アルドステロン症などに注意が必要です。
- むくみが強くなった。
- 急に体重が増えた。
- 血圧が上がった。
- 手足に力が入りにくい。
- 筋肉がつる。
- 動悸がする。
- 脈が速い。
- 眠れなくなった。
また、胃腸が弱い方では、食欲不振、胃部不快感、悪心、軟便、下痢などがみられることがあります。
漢方では胃腸を「脾=土」と考えます。
土が弱っている人に強い処方を無理に使うと、かえって身体の負担になることがあります。
ほどよい堂では「痛い場所」だけを見ません
関節の不調も、身体全体から考えることが大切です。
ほどよい堂では、漢方薬だけに頼るのではなく、次の3本柱から身体の土台を考えています。
① 栄養|細胞をつくる材料
筋肉、骨、軟骨、血液、腸粘膜など、身体を構成する細胞は食べたものを材料として日々入れ替わっています。
カロリーだけではなく、タンパク質、良質な脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維、フィトケミカルなどをバランスよく摂ることが重要です。
② 循環|材料を必要な場所へ届ける
食べた栄養も、血液によって組織へ届けられて初めて活用されます。
中医学では「気血が巡ること」を重視します。
無理のないウォーキング、ストレッチ、入浴、十分な休養などを組み合わせながら、巡りを整えていきます。
③ 吸収=腸活|食べたものを受け取れる身体へ
ほどよい堂では「何を食べるか」と同じくらい「吸収できる腸を育てること」を大切にしています。
プロバイオティクス=善玉菌。
プレバイオティクス=善玉菌のエサ。
バイオジェニックス=菌が作り出す有用成分。
この3方向を意識しながら、腸のバリア機能を支える食生活を考えます。
毎日の食事に、味噌汁や野菜スープを1杯加えてみましょう。
海藻、きのこ、豆、野菜などの発酵性食物繊維を取り入れ、1口30回を目安によく噛みます。
よく噛むことは消化のスイッチを入れ、中医学でいう「脾=消化吸収」を助ける習慣にもつながります。
「3日・3週間・3か月」で身体を整える
漢方や養生は「何日で治る」という単純なものではありません。
ただし、生活習慣を考える際には時間軸を持つと継続しやすくなります。
| 期間 | 意識すること |
|---|---|
| 3日 | 睡眠、食事、便通、むくみ、身体の重さなど小さな体感変化を観察します。 |
| 3週間 | 食事・運動・睡眠などを「習慣」として定着させます。 |
| 3か月 | 栄養・循環・吸収の3方向から身体の土台を見直します。 |
痛みがある場合は無理に運動する必要はありません。
急性炎症が強い時期と、回復期・慢性期では養生法も変わります。
こんな関節痛は漢方だけで様子を見ないでください
- 突然、非常に強い関節痛が起きた。
- 関節が真っ赤に腫れている。
- 発熱を伴っている。
- 外傷後に歩けない。
- 複数の関節が朝に長時間こわばる。
- 関節の腫れが長期間続いている。
- 急に尿量が減った。
- 息苦しさや強いむくみがある。
痛風、偽痛風、感染性関節炎、関節リウマチなど、早期診断・治療が重要な疾患もあります。
「まず漢方」ではなく、必要な検査や西洋医学的治療を受けたうえで漢方を併用するという考え方も大切です。
越婢加朮湯についてよくある質問
越婢加朮湯はどんな人に向いていますか?
比較的体力があり、患部の腫れ・熱感・赤みなどが目立つ場合に候補となります。
さらに水分停滞が加わっていることも重要な目安です。
膝痛なら越婢加朮湯を飲めばよいですか?
膝痛だけでは判断できません。
熱を持つのか、冷えて痛むのか、むくみがあるのか、体力が低下しているのかによって処方候補が変わります。
越婢加朮湯と防已黄耆湯の違いは?
越婢加朮湯は「熱感・炎症・腫れ」が一つの重要な目安です。
防已黄耆湯は、疲れやすい、汗をかきやすい、むくみやすいなど「気虚+水湿」の人に用いられることがあります。
越婢加朮湯は冷え性の関節痛にも使えますか?
冷えると痛みが増し、温めると楽になるタイプでは、越婢加朮湯よりも温める方向の漢方薬が適する場合があります。
桂枝加朮附湯などが候補になることがあります。
越婢加朮湯に副作用はありますか?
あります。
麻黄による動悸、不眠、発汗過多などや、甘草による偽アルドステロン症、低カリウム血症などに注意が必要です。
持病や併用薬がある場合は、医師・薬剤師へ確認してください。
市販の越婢加朮湯を購入できますか?
一般用医薬品として関連処方が販売されています。
ただし、麻黄や附子などを含む製品では体質や持病との相性も重要になるため、購入前に薬剤師へ相談することをおすすめします。
越婢加朮湯関連の商品を確認したい方へ
インターネットやドラッグストアでも漢方製剤を購入できる場合があります。
ただし、商品によって処方内容・生薬量・用法用量などが異なる場合があります。
パッケージの効能・効果、用法用量、使用上の注意を必ず確認してください。
とくに麻黄や附子を含む製品については、心臓疾患、高血圧、甲状腺疾患、排尿障害などがある方は購入前に専門家へ相談することをおすすめします。
漢方は「何を飲むか」より「なぜそれを選ぶか」が大切
同じ膝痛でも、越婢加朮湯が合う人もいれば、防已黄耆湯、桂枝加朮附湯、疎経活血湯など別の処方が適する人もいます。
だからこそ漢方では、「病名」ではなく「証」をみます。
ほどよい堂では、八綱弁証の陰陽・表裏・寒熱・虚実に加えて、気・血・津液、脾・肝・腎などから身体の状態を整理します。
さらに漢方薬だけに頼るのではなく、漢方×薬膳×腸活の視点から、毎日の食事や睡眠、運動、休養まで含めて「続けられる養生」を一緒に考えます。
「越婢加朮湯が気になるけれど、自分の症状に合うのかわからない」。
「病院の薬を飲んでいるけれど漢方を併用できる?」。
「冷えなのか熱なのか、自分では判断できない」。
そんな段階からご相談いただけます。
宮崎県川南町の漢方薬局「ほどよい堂」では、薬剤師・中医薬膳師・薬膳素材専門士が、体質や現在のお薬、食事、生活習慣まで確認しながら整理します。
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※漢方薬の効果や適否には個人差があります。



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