水様性の下痢、急性胃腸炎などに使用されることが多い漢方薬の『柴苓湯(さいれいとう)』ですが、最近では、腎炎・ネフローゼ症候群などに使用されることも多くなってきています。

なんとなく下痢気味でお腹の調子が悪い様な時に、おすすめの漢方薬はあるのかな?

ネフローゼ症候群とはどのような状態なの?
ネフローゼ症候群とは、血液中に含まれるタンパクの一種であるアルブミンが大量に尿中に漏れ出してしまい、血液中のタンパク(アルブミン)濃度が下がることで低タンパク血症の状態になり、その結果、全身に浮腫(むくみ)が起こる疾患です。
状態が高度になると肺やお腹、さらに心臓や陰嚢にも水が溜まってしまいます。
また、低タンパク血症になると血液中のコレステロールも増えてしまいます。
その他、腎不全、血栓症(肺梗塞、心筋梗塞、脳梗塞など)、感染症などを合併する危険性が高まってしまうのです。
ネフローゼ症候群によって起きる症状には、むくみ(浮腫)の他に体重の増加、だるさ、尿の泡立ちなどがあります。
(引用:東京女子医科大学病院 腎臓内科)

ネフローゼ症候群について分かりやすく解説してくれる動画がこちらです!
【柴苓湯(さいれいとう)】の生薬構成(ツムラ)
柴胡(サイコ)、 沢瀉(タクシャ)、 半夏(ハンゲ)、 黄芩(オウゴン)、 蒼朮(ソウジュツ)、 大棗(タイソウ)、 猪苓(チョレイ)、 人参(ニンジン)、 茯苓(ブクリョウ)、 甘草(カンゾウ)、 桂皮(ケイヒ)、 生姜(ショウキョウ)
【柴苓湯(さいれいとう)】の効能効果(ツムラ)
水瀉性下痢、急性胃腸炎、暑気あたり、むくみ
【柴苓湯(さいれいとう)】の特徴・説明
- 『柴苓湯』は腎炎・ネフローゼ症候群などに使用されることも多くなってきています。
- 『柴苓湯』とステロイド剤と併用することで、ステロイド剤の副作用を軽減したり、ステロイド剤の使用量を減らしたりすることができるとの報告があります。
- 『柴苓湯』の味は表現法が難しいですが、わずかに渋いです。
【柴苓湯(さいれいとう)】のクリニカルパール
クリニカルパール(Clinical pearl)とは、経験豊富な臨床医から得られる格言のようなものです。

『柴苓湯』は重症の急性胃腸炎やマムシ咬傷による腫脹にも応用しています。
(引用:第24回日本脳神経外科漢方医学会 学術集会)

術後のリンパ浮腫には『柴苓湯』が効果が期待できます。
(引用:漢方.jp)

一般的に『柴苓湯』は『五苓散』より高い利水作用をあらわすとされ抗炎症作用などを併せ持つことから蜂窩織炎や熱傷の急性期などのリンパ浮腫を伴う皮膚症状に対しても有用とされています。
利水作用や抗炎症作用など複数の成分により多様な薬理作用を有する『柴苓湯』の本症に対する有用性を長期間(1年間)にわたり検討した結果、蜂窩織炎の発症頻度を減ずる可能性も示唆されました。
(引用:phil漢方)

『柴苓湯』は「へバーデン結節」の腫れにも効果がある場合があると報告があります。
(引用:漢方.jp)

顔面神経麻痺(Bell麻痺・Hunt症候群)に『柴苓湯(五苓散+小柴胡湯)』を使用することで治療効果が期待できます!
顔面神経麻痺の病態は次のように考えられています。
- ヘルペスウイルスの再活性化
- 顔面神経管内の浮腫と虚血
このために、神経の絞扼によって麻痺が起きるのです。
【顔面神経麻痺の漢方治療】
- ヘルペスウイルスによる炎症に対して:
柴胡剤による抗炎症作用を期待して『小柴胡湯』
アクアポリン3・4・5に働きかけることで抗炎症作用を有する『五苓散』
- 神経管内の浮腫に対して:
利水効果に期待して『五苓散』
※『柴苓湯』+イソバイド®併用することで顔面神経麻痺に治療効果が自験例で認められました。
(引用:漢方.jp)

へバーデン結節とはどのようなものなの?
へバーデン結節とは、指の第1関節(DIP関節)が変形し曲がってしまう原因不明の疾患です。
第1関節の背側の中央の伸筋腱付着部を挟んで2つのコブ(結節)ができるのが特徴です。
この疾患の報告者へバーデンの名にちなんで「ヘバーデン結節」と呼ばれています。

へバーデン結節の症状とは、次の通りです。
- 示指から小指にかけて第1関節が赤く腫れたり、曲がったりします。
- 痛みを伴うこともあります。
- 母指(親指)にもみられることもあります。
- 第1関節の動きも悪くなります。
- 痛みのために強く握ることが困難になります。
- 第1関節の近くに水ぶくれのような透き通ったでっぱりができることがあります。
これをミューカスシスト(粘液嚢腫)と呼びます。

(引用:日本整形外科学会)
【柴苓湯(さいれいとう)】の注意点
むくみ・体重増加・血圧上昇などが現れた場合は医師・薬剤師に相談するようにしてください。
【柴苓湯(さいれいとう)】の入手方法
- 病院で処方してもらう
- ドラッグストアや楽天・Amazonなどのインターネットで購入できます。

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