薬剤師・中医薬膳師がわかりやすく解説
- 当帰建中湯はどんな人に合う? 生理痛・下腹部痛と「冷え・虚弱・血不足」の関係
- 当帰建中湯が合いやすいのはこんなタイプ
- 当帰建中湯の効能・効果|まず公式情報を確認
- 中医学では「血虚+虚寒+脾虚」の視点で考える
- 当帰建中湯の生薬構成|6つの生薬で「養う・温める・緊張をゆるめる」
- クリニカルパール|専門家は当帰建中湯をどう使い分ける?
- 当帰建中湯・当帰芍薬散・桂枝茯苓丸・加味逍遙散の違い
- 生理痛は「我慢するもの」ではない|婦人科受診を優先したいサイン
- 当帰建中湯の注意点|甘草を含む漢方薬の重複に注意
- 漢方だけに頼らない|「脾=土」を整える生理期の養生
- 3日・3週間・3ヶ月で考える「生理痛の記録と養生」
- 当帰建中湯を自分で購入したい方へ
- よくある質問|当帰建中湯Q&A
- まとめ|生理痛は「痛み」だけでなく体質全体を見る
当帰建中湯はどんな人に合う? 生理痛・下腹部痛と「冷え・虚弱・血不足」の関係
生理のたびに下腹部がぎゅっと痛む。
お腹を温めると少し楽になる。
疲れやすく、顔色もあまりよくない。
そんなタイプで検討される漢方薬の一つが、当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)です。
漢方薬は「生理痛だからこの薬」と病名だけで選ぶのではなく、冷え、体力、血色、胃腸の状態、痛み方などを合わせて「証=その人の体質と症状のパターン」を見ながら選びます。
結論からいうと、当帰建中湯は「虚証+血虚+虚寒」寄りの下腹部痛を考える処方です。
虚証=体力が不足しやすいタイプ。
血虚=血や栄養・潤いが不足しやすいタイプ。
虚寒=からだを温める力が不足し、冷えや痛みが出やすいタイプです。
ただし、生理痛の原因には子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫などが隠れている場合もあります。
漢方を選ぶことと、必要な婦人科診療を受けることは二者択一ではありません。
「病気を見逃さないこと」と「体質を整えること」の両方から考えることが大切です。
当帰建中湯が合いやすいのはこんなタイプ
- 生理痛や下腹部痛がある。
- 疲れやすく、体力にあまり自信がない。
- 顔色が青白い、血色がすぐれないと感じる。
- 手足や下腹部が冷えやすい。
- 温めると痛みが少し楽になる。
- 立ちくらみやふらつきなど、血不足を思わせる症状がある。
- お腹が弱く、緊張すると腹痛が起こりやすい。
- 生理のたびに体力を消耗するように感じる。
特にポイントになるのは、「痛み」だけではなく「虚弱・冷え・血色不良」が一緒にあることです。
反対に、体力があり、のぼせや熱感が強い、固定した刺すような痛みや強い瘀血所見が中心の場合は、別の処方を検討することがあります。
当帰建中湯が自分に合うか迷ったら
生理痛の漢方は、痛みの強さだけでなく、冷え・疲れ・むくみ・便通・ストレス・月経周期まで合わせて考えると選びやすくなります。
ほどよい堂では、薬剤師が中医学の「証」から整理します。
全国対応。
購入前の「自分に合うか知りたい」というご相談でも大丈夫です。
当帰建中湯の効能・効果|まず公式情報を確認
医療用の当帰建中湯では、体力が低下しやすく、血色がすぐれない人の月経痛、下腹部痛、痔、脱肛の痛みなどに用いられます。
ここで重要なのが「月経痛なら誰にでも当帰建中湯」という意味ではないことです。
医療用漢方製剤でも、患者さんの「証=体質・症状」を考慮して使用することが基本とされています。
漢方選びのコツ。
病名を見るだけではなく、「冷えているのか」「血が不足しているのか」「巡りが滞っているのか」「水分代謝が悪いのか」まで一緒に見ることが大切です。
中医学では「血虚+虚寒+脾虚」の視点で考える
中医学では、生理は「血」と深く関係すると考えます。
その血を生み出す土台になるのが、食べたものを消化吸収する「脾=土」の働きです。
① 血虚=血・栄養・潤いが不足しやすい
血虚タイプでは、顔色がすぐれない、立ちくらみ、目の疲れ、爪が割れやすい、髪が乾燥する、生理後にぐったりするなどがみられることがあります。
当帰は、こうした「血を養う」という方向性で古くから用いられてきた代表的な生薬です。
② 虚寒=温める力が足りず、冷えると痛みやすい
冷えるとお腹が痛む。
温めると楽になる。
手足や下腹部が冷たい。
このような状態は中医学では「寒」の要素を考えます。
当帰建中湯には桂皮や生姜なども含まれ、冷えを伴う虚弱タイプの腹痛を考える組み立てになっています。
③ 脾虚=食べても十分につくれない・吸収できない
「血が足りないなら鉄だけ摂ればよい」と単純にはいかないこともあります。
胃腸が弱く、食が細い、軟便になりやすい、疲れやすいという人では、まず「吸収できる土台」を考える必要があります。
ほどよい堂では、ここを栄養・循環・吸収=腸活の3本柱で考えています。
細胞をつくる材料を食事から入れ、それを血流で届け、胃腸からきちんと受け取れる状態をつくるという考え方です。
当帰建中湯の生薬構成|6つの生薬で「養う・温める・緊張をゆるめる」
| 生薬 | 読み | 漢方的な役割のイメージ |
|---|---|---|
| 当帰 | とうき | 血を養い、巡りを支える。 |
| 芍薬 | しゃくやく | 血を養い、筋肉の緊張や痛みを整える方向。 |
| 桂皮 | けいひ | からだを温め、巡りを助ける。 |
| 生姜 | しょうきょう | 胃腸を温め、寒による不調を整える方向。 |
| 大棗 | たいそう | 胃腸を支え、処方全体を調和する。 |
| 甘草 | かんぞう | 緊張や痛みを整え、処方を調和する。 |
医療用ツムラ製剤では、当帰・桂皮・生姜・大棗・芍薬・甘草から構成されています。
市販品や薬局製剤では、生薬量や膠飴の有無など処方仕様が異なる場合があります。
商品ごとの説明書を確認してください。
クリニカルパール|専門家は当帰建中湯をどう使い分ける?
松田邦夫先生の見解では「当帰芍薬散より、痛みが前面に出るケース」
松田邦夫先生の見解では、当帰建中湯は当帰芍薬散と比べて、生理痛そのものが主訴となり、痛みが強く出ている虚弱タイプを考える際の一つの使い分けになります。
つまり、「冷え性の女性だから当帰芍薬散」と機械的に決めるのではなく、痛みの強さ、腹部症状、体力、血色などを合わせて処方を選ぶことが大切です。
佐々木静一郎先生の臨床例から学べること
佐々木静一郎先生の臨床報告では、月経痛や腹痛を含む女性の不調に対し、当帰芍薬散、桃核承気湯、当帰建中湯、桂枝茯苓丸などを症状や腹診に合わせて使い分けた例が紹介されています。
この臨床例から読み取れるポイントは、「一つの漢方薬を病名だけで固定しない」ことです。
便秘、冷え、腹痛、肩こり、瘀血など、症状の組み合わせが変われば処方候補も変わります。
当帰建中湯のその他の症例報告について
当帰建中湯には、月経痛や下腹部痛以外の領域で症例報告が紹介されることもあります。
例えば、中永士師明先生らからは、小児の汎発型円形脱毛症に当帰建中湯を使用した1例が学会報告されています。
また、皮膚疾患に対する症例報告もあります。
ただし、これらは個別の症例報告であり、当帰建中湯が円形脱毛症や白斑の一般的な標準治療であることを意味しません。
本記事では、承認された効能・効果と、生理痛・下腹部痛における証の考え方を中心に解説しています。
当帰建中湯・当帰芍薬散・桂枝茯苓丸・加味逍遙散の違い
「生理痛の漢方」と検索すると、いくつもの処方が出てくるため迷いやすいところです。
大まかな違いを整理します。
| 漢方薬 | 考えやすい証 | 特徴的なサイン |
|---|---|---|
| 当帰建中湯 | 血虚+虚寒+虚証 | 疲れやすい。 血色がすぐれない。 冷えを伴う下腹部痛。 痛みが比較的目立つ。 |
| 当帰芍薬散 | 血虚+水滞 | 冷え。 むくみ。 めまい。 貧血傾向。 月経不順。 |
| 桂枝茯苓丸 | 瘀血=血流の滞りタイプ | 比較的体力がある。 のぼせと冷え。 固定した痛み。 月経血の塊などが目立つ場合。 |
| 加味逍遙散 | 肝鬱気滞+血虚 | イライラ。 不安感。 PMS。 気分の波。 ストレスで症状が変化する。 |
実際には、これらの特徴が重なっている方も少なくありません。
「冷えもある、むくみもある、イライラもする」という場合こそ、漢方相談で優先順位を整理する意味があります。
当帰建中湯?当帰芍薬散?
迷う人ほど「証」を確認
漢方は、同じ生理痛でも選ぶ処方が変わります。
ほどよい堂では、気・血・津液、寒熱、虚実、胃腸の状態まで確認して整理します。
生理痛は「我慢するもの」ではない|婦人科受診を優先したいサイン
生理痛には、特定の病気が確認されない「機能性月経困難症」と、子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫などが背景にある「器質性月経困難症」があります。
現代医学では、機能性月経困難症に対してNSAIDsなどの鎮痛薬が一般的に用いられ、必要に応じてLEP製剤や黄体ホルモン製剤などが検討されます。
漢方薬も治療の選択肢の一つですが、婦人科疾患の確認を飛ばしてよいという意味ではありません。
次のような場合は、自己判断で漢方だけを続けず婦人科へ。
- 生理痛が年々強くなっている。
- 痛みで学校や仕事を休むほどつらい。
- 鎮痛薬を使っても十分に抑えられない。
- 生理ではない時期にも下腹部痛がある。
- 排便時や性交時にも痛みがある。
- 月経量が非常に多い、貧血を指摘されている。
- 急に今までにない強い腹痛が出た。
- 発熱、嘔吐、失神などを伴う。
- 妊娠の可能性があり、強い腹痛や出血がある。
特に子宮内膜症では、月経痛だけでなく、慢性的な骨盤痛、排便痛、性交痛などがみられることがあります。
漢方相談と婦人科診療を上手に併用してください。
当帰建中湯の注意点|甘草を含む漢方薬の重複に注意
当帰建中湯には甘草が含まれています。
他の甘草含有漢方薬やグリチルリチン製剤などと重なる場合は、摂取量に注意が必要です。
むくみ、血圧上昇、手足のだるさ、脱力感、筋肉痛、こむら返りなどが現れた場合は、偽アルドステロン症や低カリウム血症などの可能性も考え、服用を中止して医師・薬剤師へ相談してください。
また、胃腸が著しく弱い人では、食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢などが現れることがあります。
妊娠中・妊娠の可能性がある方、持病がある方、治療中の方、複数の漢方薬や薬を使用している方は、購入前に医師または薬剤師へ確認すると安心です。
漢方だけに頼らない|「脾=土」を整える生理期の養生
当帰建中湯のような「補いながら温める」処方を考える人ほど、普段の食事から材料を入れることも大切です。
中医学では胃腸の消化吸収を「脾」の働きと考えます。
土台となる脾が整うことで、気・血・津液をつくりやすくなると考えます。
栄養|細胞をつくる材料を不足させない
カロリーだけではなく、たんぱく質、良質な脂質、鉄を含むミネラル、ビタミン、食物繊維などを意識します。
食べているのにこうした材料が不足する「新型栄養失調」にならないよう、主食だけで食事を終わらせないことがポイントです。
循環|冷やしすぎず、軽く動かす
無理な運動は必要ありません。
ウォーキングやストレッチなど、体調に合わせた軽い運動で巡りを支えます。
下腹部や腰を冷やしすぎないことも大切です。
吸収=腸活|食べるだけでなく「受け取れる腸」へ
まずは一口30回を目安によく噛みます。
噛むことは消化のスイッチになり、脾を助ける第一歩です。
発酵性食物繊維、海藻、きのこ、豆類などを少量ずつ取り入れ、味噌汁や野菜スープを毎日の定番にしてみましょう。
善玉菌そのものだけでなく、菌のエサになるプレバイオティクスや、菌がつくる有用成分を意識することも腸活では重要です。
3日・3週間・3ヶ月で考える「生理痛の記録と養生」
最初の3日|まず、自分の痛み方を知る
痛みの場所、冷え、月経量、血の塊、便通、頭痛、鎮痛薬の使用回数などを記録します。
「温めると楽か」「動くと悪化するか」も漢方を選ぶ手掛かりになります。
3週間|胃腸をいたわる習慣をつくる
よく噛む。
温かい汁物を一品加える。
たんぱく質を毎食意識する。
軽く歩く。
睡眠時間を確保する。
一度に全部ではなく、まず一つを続けてください。
3ヶ月|2〜3周期の変化を振り返る
痛みの強さだけでなく、鎮痛薬の回数、疲労感、冷え、月経量、日常生活への影響を振り返ります。
改善が乏しい、あるいは悪化している場合は、漢方の見直しだけでなく婦人科での評価も検討します。
当帰建中湯を自分で購入したい方へ
当帰建中湯には医療用製剤のほか、市販薬や薬局製剤の煎じ薬があります。
煎じ薬は、生薬を水から煮出して服用する昔ながらの方法です。
下の商品は、当帰・芍薬・桂皮・大棗・生姜・甘草を用いた当帰建中湯の煎じ薬です。
服用前には必ず商品説明・使用上の注意を確認してください。
よくある質問|当帰建中湯Q&A
当帰建中湯は生理痛なら誰でも使えますか?
いいえ。
生理痛という症状だけでなく、体力が低下しやすい、血色がすぐれない、冷えや下腹部痛があるなど、全体の「証」を合わせて考えます。
当帰建中湯と当帰芍薬散はどう違いますか?
どちらも虚弱で冷えや血不足がある人に検討されますが、当帰芍薬散はむくみ・めまいなど「水滞」の要素が目立つ場合、当帰建中湯は下腹部の痛みが前面に出る場合を考えやすいという違いがあります。
実際には症状全体から判断します。
当帰建中湯はすぐ効きますか?
効果の現れ方には個人差があり、「何日で効く」と一律には決められません。
市販薬を一定期間使用しても改善がみられない場合は漫然と続けず、医師・薬剤師へ相談してください。
鎮痛薬と漢方薬は一緒に使えますか?
併用される場合もありますが、服用中の薬、持病、腎機能、胃腸の状態などによって確認が必要です。
自己判断で薬を中止せず、医師または薬剤師に相談してください。
毎月の生理痛がひどいのですが、漢方相談だけで大丈夫ですか?
日常生活に支障が出るほどの痛み、年々悪化する痛み、生理以外の腹痛、性交痛、排便痛、過多月経などがある場合は婦人科受診をおすすめします。
漢方相談と婦人科診療は併用できます。
妊娠中でも当帰建中湯を使えますか?
妊娠中または妊娠している可能性がある場合は、自己判断で服用せず、医師・薬剤師へ相談してください。
まとめ|生理痛は「痛み」だけでなく体質全体を見る
当帰建中湯は、疲れやすく、血色がすぐれず、冷えを伴う月経痛・下腹部痛などで検討される漢方薬です。
中医学的には、血虚=血や栄養不足、虚寒=温める力の不足、脾虚=消化吸収力の不足という視点から整理すると理解しやすくなります。
ただし、生理痛の背景に子宮内膜症や子宮筋腫などが隠れていることもあります。
「漢方で整えること」と「必要な検査を受けること」を両立させることが大切です。
自分が当帰建中湯タイプなのか、当帰芍薬散や桂枝茯苓丸など別の処方を考えた方がよいのか分からない場合は、症状だけで商品を選ぶ前に体質を整理してみてください。
「私にはどの漢方?」を薬剤師と整理しませんか
宮崎県川南町の漢方薬局「ほどよい堂」では、薬剤師・中医薬膳師・薬膳素材専門士が、漢方×薬膳×腸活の視点からご相談を承っています。
生理痛、冷え、疲れ、PMS、胃腸の不調など、複数の悩みが重なっている方もご相談ください。
まずは「自分の体質を知りたい」という段階でも大丈夫です。
主な参考資料
PMDA「ツムラ当帰建中湯エキス顆粒(医療用)電子添文」。
日本漢方生薬製剤協会「医療用漢方製剤2024」。
日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023」。
日本産科婦人科学会「子宮内膜症」。
日本東洋医学会関連文献・症例報告。
本記事は一般的な健康情報の提供を目的とするもので、診断・治療の代替ではありません。



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