第111回薬剤師国家試験の結果、文部科学省の2025年度調査、第112回試験日程、第115回から予定される国家試験制度変更を反映しています。
「薬学部を選ぶなら、薬剤師国家試験の合格率が高い大学が安心なのでは?」。
薬学部を目指す受験生や保護者の方なら、一度は大学別の国家試験合格率を確認すると思います。
しかし、ここで知っておきたいのが、公表されている国家試験合格率だけでは、入学してから薬剤師になるまでの実態を十分に判断できないということです。
厚生労働省が公表する薬剤師国家試験の合格率は、基本的に「合格者数÷実際の受験者数」で計算されています。
そのため、「入学した学生のうち何%が6年間で卒業し、そのまま国家試験に合格したのか」とは意味が異なります。
この記事では、現役の薬剤師の視点から、2026年の最新データを使って薬剤師国家試験合格率の“からくり”と正しい見方を整理します。
大学選びで本当に確認したい「卒業率」「退学等の割合」「標準修業年限内での国家試験合格率」についても解説します。
大学選びでは、国家試験の「新卒合格率」だけを見ないことが重要です。
- 第111回薬剤師国家試験の全体合格率は68.49%。
- 6年制新卒の合格率は86.25%。
- 公式合格率の分母は「出願者」ではなく「受験者」。
- 出願者と受験者の差だけでは、その理由を断定できない。
- 大学比較では、文部科学省の「標準修業年限内での国家試験合格率」「卒業率」「退学等の割合」も確認する。
- 学費だけでなく、留年・卒業延期になった場合の費用まで考える。
- 【2026年最新】第111回薬剤師国家試験の合格率は68.49%
- 薬剤師国家試験合格率の「からくり」とは?分母は受験者数
- 薬学部選びで本当に見るべきは「入学→卒業→国家試験合格」
- 薬学部の大学別合格率を見るときに確認したい7項目
- 第111回薬剤師国家試験の合格基準
- 2027年実施の第112回薬剤師国家試験の日程も公表済み
- 第115回薬剤師国家試験から試験制度が変更予定
- 薬学部受験生・保護者におすすめの大学比較手順
- すでに薬学部生なら「合格率」より自分の学習戦略を整える
- 薬剤師として伝えたいこと|国家試験合格率だけで大学を決めない
- 薬剤師国家試験の合格率に関するよくある質問
- まとめ|薬剤師国家試験の高い合格率だけに惑わされない
- 参考・公的情報
【2026年最新】第111回薬剤師国家試験の合格率は68.49%
2026年2月21日・22日に実施された第111回薬剤師国家試験では、12,774人が受験し、8,749人が合格しました。
厚生労働省が発表した全体の合格率は68.49%です。
| 区分 | 出願者数 | 受験者数 | 合格者数 | 公式合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 全体 | 14,261人 | 12,774人 | 8,749人 | 68.49% |
| 6年制新卒 | 8,856人 | 7,781人 | 6,711人 | 86.25% |
| 6年制既卒 | 5,257人 | 4,871人 | 2,013人 | 41.33% |
| その他 | 148人 | 122人 | 25人 | 20.49% |
全体では約7割ですが、新卒に限れば8割を超えています。
一方、既卒者は41.33%で、新卒者との差が大きいことも特徴です。
薬剤師国家試験の合格率は近年おおむね68〜69%台
「最近、薬剤師国家試験が極端に難しくなっているのでは?」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、直近5回の全体合格率を見ると、大きく上下しているわけではなく、おおむね68〜69%台で推移しています。
| 実施年 | 回 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 2022年 | 第107回 | 14,124人 | 9,607人 | 68.02% |
| 2023年 | 第108回 | 13,915人 | 9,602人 | 69.00% |
| 2024年 | 第109回 | 13,585人 | 9,296人 | 68.43% |
| 2025年 | 第110回 | 13,310人 | 9,164人 | 68.85% |
| 2026年 | 第111回 | 12,774人 | 8,749人 | 68.49% |
したがって、受験生が注目すべきなのは「全国平均が低いか高いか」だけではありません。
自分が入学を検討している大学で、学生が6年間どのような経過をたどっているのかを見ることが重要です。
薬剤師国家試験合格率の「からくり」とは?分母は受験者数
薬剤師国家試験の大学別合格率を見ると、90%前後の高い数字が並ぶ大学もあります。
ここだけを見ると、「この大学に入れば約9割の確率で薬剤師になれる」と感じるかもしれません。
しかし、その解釈は正確ではありません。
厚生労働省が示す国家試験合格率は、基本的に次の計算です。
つまり、大学へ入学した人数を分母にした数字ではありません。
また、国家試験へ出願した人数を分母にした数字でもありません。
「出願者数」と「受験者数」は同じではない
出願者とは、国家試験の受験手続きを行った人です。
受験者とは、実際に国家試験を受験した人です。
第111回では、全体の出願者14,261人に対して、実際の受験者は12,774人でした。
その差は1,487人です。
6年制新卒だけを見ても、出願者8,856人に対して受験者7,781人で、1,075人の差があります。
出願者と受験者の差があるからといって、「大学が国家試験合格率を上げるために学生を意図的に受験させなかった」と一律に判断することはできません。
卒業要件を満たさなかったケース、卒業延期、欠席、その他の事情などが考えられますが、厚生労働省の集計表だけから個別の理由までは判断できません。
したがって、大学を評価するときは「出願者と受験者の差」だけで結論を出さず、文部科学省が公表する卒業率や退学等の割合と合わせて確認するのが適切です。
「真の合格率」ではなく「出願者ベース参考率」として見る
インターネット上では、「合格者数÷出願者数」を「真の合格率」と表現するケースがあります。
しかし、これは厚生労働省が定める公式の合格率ではありません。
そこで本記事では、誤解を避けるため「出願者ベース参考率」と呼びます。
| 区分 | 公式合格率 合格者÷受験者 | 出願者ベース参考率 合格者÷出願者 |
|---|---|---|
| 全体 | 68.49% | 約61.35% |
| 6年制新卒 | 86.25% | 約75.78% |
| 6年制既卒 | 41.33% | 約38.29% |
※「出願者ベース参考率」は、厚生労働省公表の出願者数と合格者数から当サイトで計算した参考値です。
厚生労働省が公表する公式合格率ではありません。
薬学部選びで本当に見るべきは「入学→卒業→国家試験合格」
薬学部受験生や保護者の方にとって、本当に知りたいのは「国家試験を受けた人のうち何%が合格したか」だけではないはずです。
むしろ重要なのは、入学した学生が6年間で卒業し、国家試験まで到達して合格できているかです。
そこで役立つのが、文部科学省が公表している「薬学部の6年制課程における退学状況等」のデータです。
文部科学省は大学別に「標準修業年限内での国家試験合格率」を公表
文部科学省の2025年度調査では、6年制薬学部について大学別・入学年度別に、主に次の情報が公表されています。
- 退学等の割合。
- 標準修業年限内での薬剤師国家試験合格率。
- 卒業率。
- 長期在籍者の割合。
国家試験の新卒合格率だけでは見えにくい「入学後の経過」を確認できるため、薬学部を比較するときには非常に重要な一次資料です。
気になる大学を3〜5校ほど選び、「国試合格率」「卒業率」「退学等の割合」を横並びにして比較すると違いが見えやすくなります。
仮に国家試験合格率が90%でも「入学者の90%が薬剤師になる」とは限らない
ここは架空の大学を例に考えると分かりやすくなります。
- 入学者:100人。
- 6年間で卒業:70人。
- 国家試験を受験:63人。
- 国家試験に合格:57人。
この場合、国家試験を実際に受験した63人を分母にすると、合格率は約90.5%です。
しかし、最初に入学した100人を基準に考えると、6年間で国家試験まで合格したのは57人です。
もちろん、これは仕組みを理解するための架空例であり、特定の大学を示す数字ではありません。
このように、「国家試験合格率90%」と「入学者の90%が6年間で薬剤師になれる」は全く同じ意味ではありません。
ここを理解しておくことが、薬学部選びでは非常に重要です。
薬学部の大学別合格率を見るときに確認したい7項目
薬学部を比較するときは、ひとつの数字だけで順位を付けるのではなく、複数の指標を組み合わせて判断しましょう。
1.標準修業年限内での薬剤師国家試験合格率
まず優先したいのが、文部科学省が公表する入学年度別の国家試験合格率です。
「入学してから標準修業年限内に国家試験合格まで到達できた学生がどの程度いるのか」を考えるうえで参考になります。
2.卒業率
6年制薬学部は、入学すれば自動的に6年後に卒業できるわけではありません。
進級基準、実務実習、卒業試験などを含めて、卒業まで到達できる割合も確認しましょう。
3.退学等の割合
国家試験合格率が高くても、退学等の割合が高い大学であれば、その背景まで確認する必要があります。
数年間の推移を見ることで、単年度だけでは分からない傾向をつかみやすくなります。
4.新卒の国家試験合格率
厚生労働省が公表する大学別の新卒合格率も重要な指標です。
ただし、この数字だけで大学全体を評価するのではなく、卒業率などと組み合わせて確認しましょう。
5.出願者数と受験者数の差
出願者数と受験者数に大きな差がある場合は、その大学の卒業要件や卒業試験、進級制度などを大学公式サイトで確認する材料になります。
ただし、差の理由を公表データだけで断定しないことも大切です。
6.6年間の学費と留年・卒業延期時の費用
特に私立薬学部では、6年間の学費は大きな負担になります。
そのため、初年度納入金や6年間の総額だけでなく、留年や卒業延期になった場合に追加で必要となる授業料も確認しておきましょう。
7.教育・学生支援と自分との相性
国家試験合格率は大切ですが、大学生活は6年間あります。
少人数指導、補習、質問体制、実務実習、研究室、通学環境、生活環境なども含め、自分が継続して学べる大学かどうかを確認することが重要です。
第111回薬剤師国家試験の合格基準
第111回薬剤師国家試験では、厚生労働省が次のすべての条件を満たした人を合格としています。
- 全問題の得点が426点以上。
- 必須問題の得点が、全体で配点の70%以上。
- 必須問題を構成する各科目で、それぞれ配点の30%以上。
- 禁忌肢問題の選択数が2問以下。
第111回では1問2点、686点満点とされています。
合格基準は試験回によって確認が必要なため、受験年度には必ず厚生労働省の最新発表を確認してください。
2027年実施の第112回薬剤師国家試験の日程も公表済み
2026年9月現在、最新の合格結果が公表されているのは第111回です。
一方、次回となる第112回薬剤師国家試験の実施日程はすでに厚生労働省から公表されています。
- 試験日:2027年2月20日(土)・21日(日)。
- 合格発表:2027年3月25日(木)午後2時予定。
第112回の合格率は、当然ながらまだ決まっていません。
「第112回の合格率」として予測値や過去データを最新結果のように扱っている情報には注意しましょう。
第115回薬剤師国家試験から試験制度が変更予定
2026年3月、厚生労働省は薬剤師国家試験の新しい基本方針を公表しました。
新方針は令和11年度実施の第115回薬剤師国家試験から適用予定です。
主な変更点は次のとおりです。
- 試験科目を「社会と薬学」「基礎薬学」「医療薬学」「衛生薬学」「臨床薬学」の5科目へ再編。
- 連問・複合問題では、組み合わせる科目の制限を設けない方式へ変更。
- 出題数を、必須90問・薬学理論125問・薬学実践120問の計335問へ変更。
これは、薬学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂や、将来の薬剤師に求められる実践的能力を踏まえた変更です。
これから薬学部へ入学する世代にとっては、在学中に国家試験制度が変わる可能性があるため、知っておきたい情報です。
薬学部受験生・保護者におすすめの大学比較手順
情報が多すぎて迷う場合は、次の順番で調べると比較しやすくなります。
すでに薬学部生なら「合格率」より自分の学習戦略を整える
すでに薬学部へ入学している方にとって、大学別合格率を見続けても自分の点数が上がるわけではありません。
大切なのは、現在地を把握して、必要な勉強を積み重ねることです。
過去問、模擬試験、大学の補講、国家試験対策講座などを利用しながら、「分からない分野を放置しない仕組み」を作るほうが実践的です。
薬剤師として伝えたいこと|国家試験合格率だけで大学を決めない
国家試験に合格することは、薬剤師になるための重要な通過点です。
そのため、国家試験合格率を大学選びの指標にすること自体は間違いではありません。
ただし、薬学部で過ごす6年間は国家試験対策だけの時間ではありません。
基礎薬学、臨床、実務実習、研究、人との関わりを通して、薬剤師としての土台をつくる時間でもあります。
「国試合格率が一番高い大学」だけを探すのではなく、自分が6年間学び続け、卒業し、国家試験へ進みやすい環境かという視点を持ってください。
勉強時間を増やすだけでなく、睡眠・食事・休養を整えて「勉強を続けられる体調」をつくることも大切です。
漢方・養生の考え方から、受験期の体調管理をまとめています。
薬剤師国家試験の合格率に関するよくある質問
Q.薬剤師国家試験の公式合格率はどのように計算されますか?
A.基本的に「合格者数÷実際の受験者数」で計算されます。
出願者数や大学への入学者数が分母ではありません。
Q.大学の新卒合格率が90%なら、入学者の90%が薬剤師になれますか?
A.そうとは限りません。
新卒合格率は、国家試験を実際に受験した新卒者を分母にした数字です。
入学後の留年、退学、卒業延期などは別に考える必要があります。
Q.「出願者数÷合格者数」を見れば本当の合格率が分かりますか?
A.合格者数÷出願者数は参考にはなりますが、厚生労働省の公式合格率ではありません。
本記事では「出願者ベース参考率」として扱っています。
大学選びでは、文部科学省の卒業率や標準修業年限内での国家試験合格率も合わせて見ることをおすすめします。
Q.2026年最新の薬剤師国家試験合格率は何%ですか?
A.2026年に実施された第111回薬剤師国家試験は、全体68.49%、6年制新卒86.25%でした。
Q.第112回薬剤師国家試験はいつですか?
A.2027年2月20日・21日に実施予定です。
合格発表は2027年3月25日午後2時の予定です。
Q.薬学部選びで最も重要な数字は何ですか?
A.ひとつだけで判断するのはおすすめできません。
国家試験新卒合格率、標準修業年限内での国家試験合格率、卒業率、退学等の割合、学費、教育支援などを総合的に比較するのが現実的です。
まとめ|薬剤師国家試験の高い合格率だけに惑わされない
第111回薬剤師国家試験の全体合格率は68.49%、6年制新卒では86.25%でした。
しかし、この数字はあくまで「実際に国家試験を受験した人」を分母にした合格率です。
薬学部へ入学する受験生や保護者にとって本当に重要なのは、入学してから卒業し、国家試験へ到達し、薬剤師になるまでの流れです。
- 国家試験の新卒合格率だけで大学を決めない。
- 出願者数と受験者数の両方を見る。
- 「出願者ベース参考率」は参考値として利用する。
- 文部科学省の「標準修業年限内での国家試験合格率」を確認する。
- 卒業率と退学等の割合も確認する。
- 6年間+留年時の学費まで考える。
- 最後は、自分が6年間学び続けられる環境かを確認する。
数字は、大学を選ぶための大切な材料です。
しかし、ひとつの数字だけを切り取ると見えなくなるものがあります。
厚生労働省と文部科学省の一次資料を組み合わせて、自分に合った薬学部を選ぶための材料として活用してください。
参考・公的情報
- 厚生労働省「第111回薬剤師国家試験の合格発表」
- 厚生労働省「第111回薬剤師国家試験合格基準及び正答について」
- 厚生労働省「薬剤師国家試験のページ」
- 文部科学省「薬学部の6年制課程における退学状況等」
- 厚生労働省「第112回薬剤師国家試験の施行」
- 厚生労働省「薬剤師国家試験制度について新たな基本方針を取りまとめました」
※掲載情報は2026年9月時点で確認できる厚生労働省・文部科学省の公表資料をもとに作成しています。
国家試験制度、大学の進級・卒業要件、学費等は変更される場合があります。
進学・受験の際は必ず最新の公式情報をご確認ください。



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