そんなときに検討される漢方薬が、温清飲です。
温清飲(うんせいいん)は、「血を補う四物湯」と「余分な熱を冷ます黄連解毒湯」を組み合わせた処方です。
中医学では、肌を養う「血」が不足しながら、同時に熱がこもっている「血虚血熱(けっきょけつねつ)」タイプをイメージすると理解しやすい漢方薬です。
ただし、同じ「かゆい」「赤い」という皮膚症状でも、乾燥しているのか、ジュクジュクしているのか、胃腸が丈夫なのかによって選ぶ漢方薬は変わります。
この記事では、薬剤師・中医薬膳師の視点から、温清飲がどんな体質に向きやすいのかを詳しく解説します。
漢方は病名だけではなく、乾燥・赤み・ほてり・胃腸の状態・月経・睡眠・便通などを組み合わせて「証」を考えます。
ほどよい堂では、薬剤師が「漢方×薬膳×腸活」の視点から無料でご相談をお受けしています。
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※持病・服薬中の薬がある方、妊娠中・授乳中の方は医師・薬剤師へご相談ください。
温清飲とは?「四物湯+黄連解毒湯」の漢方薬
温清飲は、中国・明代の医学書『万病回春』に記載されている処方です。
処方内容を見ると、四物湯と黄連解毒湯を組み合わせた構成になっています。
| 処方 | 中医学的な役割 | イメージ |
|---|---|---|
| 四物湯 | 補血・活血 | 不足した血を養い、肌や月経の土台を支える |
| 黄連解毒湯 | 清熱瀉火・解毒 | 余分な熱やほてりを鎮める方向へ働く |
| 温清飲 | 養血+清熱 | 乾燥しているのに赤い・熱い状態を整える |
「温」は四物湯によって血を養う働き、「清」は黄連解毒湯によって余分な熱を清ます働きを表していると考えると分かりやすいでしょう。
温清飲が向きやすいのは「血虚血熱タイプ」
中医学的には、温清飲は血虚血熱を考えると理解しやすい処方です。
血虚とは「血や栄養・潤いが不足しているタイプ」です。
血熱とは「血の領域に熱がこもり、赤み・ほてり・炎症などが現れやすいタイプ」です。
- 皮膚がカサカサして乾燥している
- 肌の色つやが悪い
- 乾燥しているのに赤みや熱感がある
- かゆみを伴う湿疹・皮膚炎がある
- 顔や上半身がほてりやすい
- イライラしやすい
- 月経不順・月経痛などが気になる
- 更年期のほてりや精神的な揺らぎがある
複数当てはまる場合には、温清飲の「証」に近い可能性があります。
ただし、セルフチェックだけで漢方薬を決定するものではありません。
ツムラ温清飲の効能・効果
一般用の「ツムラ漢方温清飲エキス顆粒」では、体力中等度で、皮膚がかさかさして色つやが悪く、のぼせる人の次の症状が効能・効果として示されています。
- 月経不順
- 月経困難
- 血の道症
- 更年期障害
- 神経症
- 湿疹・皮膚炎
単に「皮膚炎だから温清飲」というわけではありません。
乾燥して色つやが悪いという「血虚」の要素と、のぼせ・赤み・熱感という「熱」の要素が重なっているところが重要です。
温清飲を構成する8種類の生薬
| 生薬 | 読み方 | 中医学的な位置づけ |
|---|---|---|
| 地黄 | ジオウ | 血・陰を養う |
| 芍薬 | シャクヤク | 血を養い、緊張を和らげる |
| 川芎 | センキュウ | 血の巡りを助ける |
| 当帰 | トウキ | 血を養い巡らせる |
| 黄芩 | オウゴン | 余分な熱を清ます |
| 黄柏 | オウバク | 熱・湿熱を清ます |
| 黄連 | オウレン | 強い熱を清ます |
| 山梔子 | サンシシ | 熱を外へ逃がす方向へ働く |
アトピー性皮膚炎では「乾燥」か「ジュクジュク」かを見る
アトピー性皮膚炎や慢性湿疹では、病名だけで漢方薬を決めることはできません。
漢方では皮膚の乾燥、赤み、熱感、滲出液、かゆみ、体力、胃腸の状態などから「証」を組み立てていきます。
元記事で紹介している新見正則先生のクリニカルパールでは、アトピー性皮膚炎でカサカサしたタイプでは温清飲を検討し、ジュクジュクしたタイプでは消風散が選択肢になりやすいという使い分けが示されています。
新見先生の著書でも、慢性湿疹に対する漢方薬として温清飲・消風散などが取り上げられています。
「アトピーだからこの処方」ではなく、皮膚の状態によって選択肢を変えるというのが重要なポイントです。
元記事で紹介している松田邦夫先生の見解では、アトピー性皮膚炎では一つの処方だけでは十分でない場合があり、温清飲に白虎加人参湯を組み合わせて検討することがあるとされています。
白虎加人参湯は、強い熱感や口渇などを伴う「熱が強いタイプ」に用いられる方剤です。
ただし、漢方薬同士の併用は構成生薬の重複や体質との適合を確認する必要があるため、自己判断での併用は避け、医師・薬剤師へ相談してください。
温清飲・消風散・当帰飲子はどう使い分ける?
| 方剤 | 皮膚の特徴 | 中医学的イメージ |
|---|---|---|
| 温清飲 | 乾燥+赤み・熱感 | 血虚+血熱 |
| 消風散 | かゆみが強い・湿潤・滲出液を伴うことがある | 風湿熱 |
| 当帰飲子 | 乾燥が強く、特に高齢者などの慢性的なかゆみ | 血虚+風燥 |
| 黄連解毒湯 | 赤み・ほてり・熱感が強い | 実熱・火熱 |
| 白虎加人参湯 | 強い熱感・ほてり・口渇など | 気分熱盛+津液不足 |
このように、「乾燥している」という一つの症状だけでも候補は複数あります。
だからこそ、漢方では病名よりも「今のからだの状態」を確認することが大切です。
「温清飲と消風散のどちらなのか分からない」「胃が弱いけれど飲んで大丈夫?」という方は、購入前に一度ご相談ください。
ほどよい堂では、現在の症状だけでなく、食事・睡眠・便通・ストレス・月経・服薬状況まで含めて確認します。
アトピー性皮膚炎への温清飲を調べた臨床報告もある
日本東洋医学雑誌には、アトピー性皮膚炎に伴う顔面の赤みに温清飲を使用した20例の臨床報告があります。
温清飲を単独で使用した10例では、著効1例・有効2例が報告され、別の漢方薬を併用した10例でも有効例が報告されました。
一方で、紅斑の悪化や胃痛などの副作用も報告されています。
これは20例という小規模な臨床報告で、現在の大規模なランダム化比較試験のような研究ではありません。
「アトピー性皮膚炎なら温清飲が効く」と断定できるものではなく、あくまで漢方治療を考える際の参考情報の一つとして捉える必要があります。
温清飲は「シミ」に効く?
「温清飲 シミ」で検索される方も多いですが、ツムラ一般用温清飲の効能・効果には「シミ」は明記されていません。
中医学では血虚や血熱、瘀血など皮膚の状態をさまざまな角度から考えますが、シミには紫外線、加齢、炎症後色素沈着、ホルモンなど複数の要因があります。
シミを目的として自己判断で温清飲を長期間服用するのではなく、皮膚科での診断を基本としてください。
温清飲の副作用と注意点
漢方薬は「天然だから副作用がない」というものではありません。
温清飲にも注意すべき症状があります。
胃腸が弱い人は注意
温清飲には地黄が含まれています。
医療用添付文書では、著しく胃腸が虚弱な人では食欲不振・胃部不快感・悪心・嘔吐・下痢などが現れることがあるとされています。
中医学でいう「脾虚=消化吸収力が弱いタイプ」が強い人では、皮膚症状だけを見て温清飲を選ばないことが大切です。
長期服用では山梔子にも注意
温清飲には山梔子(サンシシ)が含まれています。
山梔子含有製剤の長期投与、とくに長期間にわたる使用では、腸間膜静脈硬化症が報告されています。
腹痛・下痢・便秘・腹部膨満などを繰り返す場合には、服用を続けず医療機関へ相談してください。
まれでも重要な副作用
- 間質性肺炎
- 肝機能障害・黄疸
- 腸間膜静脈硬化症
- 発疹・発赤
- 食欲不振・胃部不快感・悪心・嘔吐・下痢など
医療用温清飲の添付文書でも、患者の「証」を考慮し、経過を十分に観察して、改善が認められない場合には継続投与を避けることが示されています。
漢方薬も定期的に「今の証に合っているか」を見直すことが大切です。
ほどよい堂では「漢方だけ」で考えません
皮膚は常に新しい細胞へ入れ替わっている組織です。
そのため、ほどよい堂では漢方薬だけでなく、細胞をつくる材料・巡り・消化吸収まで含めて考えます。
① 栄養|皮膚をつくる材料を不足させない
カロリーは足りていても、タンパク質・良質な脂質・ビタミン・ミネラル・食物繊維などが不足している「新型栄養失調」の状態では、からだの材料が不足しやすくなります。
肉・魚・卵・大豆製品などのタンパク質に加えて、海藻・きのこ・豆・野菜などを組み合わせることを基本にします。
② 循環|つくった栄養を届ける
中医学では「血」は皮膚や髪、爪などを養う重要な存在と考えます。
適度な運動や入浴、十分な睡眠なども含め、血流を妨げにくい生活を整えていきます。
③ 吸収=腸活|食べたものを受け取れる土台をつくる
中医学の「脾」は、食べ物から気血をつくる消化吸収の中心です。
土である「脾」が整うことは、全身の気血を養う土台づくりにつながります。
まず一つ変えるなら、食事を急いで流し込まず「一口30回」を目安によく噛むことから始めてみてください。
味噌汁や野菜スープ、海藻・きのこ・豆などを毎日の定番にして、プロバイオティクス・プレバイオティクス・バイオジェニックスの三方向から腸内環境を支える考え方もあります。
まず3日で「食事・睡眠・便通などの小さな体感」を観察します。
3週間で続けられる生活習慣へ整えます。
3か月ほどの時間軸で、食事・休養・運動を含めた土台を見直していくイメージです。
温清飲についてよくある質問
Q.温清飲はどんな人に向いていますか?
一般用温清飲では、体力中等度で、皮膚がカサカサして色つやが悪く、のぼせる人の湿疹・皮膚炎、月経不順、更年期障害などが適応として示されています。
中医学では「血虚血熱=血・潤い不足+熱がこもるタイプ」を一つの目安として考えます。
Q.アトピー性皮膚炎なら温清飲を飲めばよいですか?
いいえ。
アトピー性皮膚炎でも、乾燥が中心なのか、ジュクジュクしているのか、赤み・熱感が強いのかなどによって漢方処方は変わります。
標準的な皮膚科治療を基本にしながら、漢方を使用する場合は医師・薬剤師へ相談してください。
Q.温清飲はどのくらいで効果が出ますか?
効果を感じるまでの期間には個人差があり、「○日で効く」と一律には言えません。
添付文書でも経過を観察し、改善が認められない場合には漫然と継続しないことが示されています。
Q.温清飲を長期間飲み続けても大丈夫ですか?
温清飲には山梔子が含まれており、山梔子含有製剤の長期使用では腸間膜静脈硬化症が報告されています。
長期間使用する場合は、自己判断で続けるのではなく医師・薬剤師へ相談してください。
Q.胃が弱くても温清飲を飲めますか?
胃腸が著しく虚弱な人では、食欲不振・胃部不快感・悪心・下痢などが現れる場合があります。
胃が弱い方ほど「皮膚症状だけ」で判断せず、体質全体から処方を検討することが重要です。
Q.温清飲は市販されていますか?
一般用医薬品として市販されている製品があります。
ただし、ほかの漢方薬や医薬品を使用している場合は、生薬の重複などを確認するため薬剤師への相談をおすすめします。
まとめ|「乾燥しているのに熱い」が温清飲を考えるヒント
温清飲は、四物湯による「血を養う方向」と、黄連解毒湯による「熱を清ます方向」を併せ持つ漢方薬です。
「カサカサする」「色つやが悪い」という血虚のサインに、「赤み」「ほてり」「熱感」などが重なっていることが、一つの大きな判断材料になります。
一方で、ジュクジュクした湿疹、胃腸虚弱、熱が強すぎる状態などでは、別の処方が適する場合があります。
漢方は「何の病気か」だけではなく「どんな状態の人に起きているか」まで見ることが大切です。
ほどよい堂は、宮崎県川南町にある漢方薬局です。
薬剤師・中医薬膳師・薬膳素材専門士が、中医学と現代栄養学の両面からご相談をお受けしています。
全国からLINEでご相談いただけます。
「温清飲が合うか知りたい」だけでも大丈夫です。
現在の症状・体質・服薬状況を確認し、漢方・食事・腸活の優先順位を整理します。
※相談内容によっては医療機関での受診をおすすめする場合があります。
※漢方薬の効果や適否には個人差があります。
ほどよい堂 代表 河邊甲介
薬剤師/中医薬膳師/薬膳素材専門士。
宮崎県川南町の漢方薬局「ほどよい堂」で、漢方×薬膳×腸活を組み合わせた健康相談を行っています。
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- 日本東洋医学雑誌 第46巻第5号「The Therapeutic Effect of Unsei-in on Facial Redness in Atopic Dermatitis」
- 新見正則『西洋医がすすめる漢方』ほか
本記事は一般的な健康情報を提供する目的で作成したもので、個別の診断・治療を行うものではありません。
症状が強い場合、急速に悪化している場合、感染症が疑われる場合などは医療機関を受診してください。



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