「のどが赤く腫れて、飲み込むと痛い」。
「扁桃腺が腫れやすい」。
「桔梗湯(ききょうとう)は、どんなときに使う漢方なの?」。
そんな疑問を持つ方に知っていただきたいのが、桔梗(ききょう)と甘草(かんぞう)の2つの生薬からなる桔梗湯です。
医療用の桔梗湯は、「咽喉がはれて痛む扁桃炎・扁桃周囲炎」に用いられます。
シンプルな処方ですが、甘草を含むため、副作用や他の漢方薬との重複にも注意が必要です。
この記事では、薬剤師・中医薬膳師の視点から、桔梗湯の特徴、飲み方の考え方、銀翹散や麦門冬湯との違い、クリニカルパール、副作用までわかりやすく整理します。
- 桔梗湯は「のどが腫れて痛む」タイプに用いられる漢方薬です。
- 桔梗と甘草という2種類の生薬で構成されています。
- 「含みながら少しずつ飲む」という使い方が臨床研究でも検討されています。
- 急性上気道炎の咽頭痛に対する即効性については、比較試験で明確な優越性が確認されていないため、過度な期待は禁物です。
- 甘草を含むため、偽アルドステロン症や低カリウム血症などに注意が必要です。
桔梗湯(ききょうとう)とは?
桔梗湯は、桔梗(キキョウ)と甘草(カンゾウ)という、わずか2種類の生薬から構成される漢方薬です。
医療用のツムラ桔梗湯では、成人1日量7.5g中の原生薬換算量として、桔梗2.0g、甘草3.0gが使用されています。
| 生薬 | 漢方で考える主な役割 | 桔梗湯でのポイント |
|---|---|---|
| 桔梗 | 宣肺・利咽・祛痰など | 肺の働きを助けながら、のどの腫れや痰などに用いられる生薬です。 |
| 甘草 | 清熱解毒・緩急など | のどの炎症や痛みを考える際に用いられます。甘味がある一方、過量・重複には注意が必要です。 |
中医学的には、桔梗湯は「咽喉腫痛(いんこうしゅつう)=のどが腫れて痛む状態」を考えると理解しやすい処方です。
ただし、中医学では同じ「のどの痛み」でも、寒熱・虚実・乾燥・痰・ストレスなど背景によって証が異なります。
桔梗湯だけですべてののど症状に対応するわけではありません。
桔梗湯の効能・効果は?
医療用ツムラ桔梗湯の効能・効果は、「咽喉がはれて痛む次の諸症:扁桃炎、扁桃周囲炎」です。
つまりポイントは「ただイガイガする」だけではなく、のどが腫れて痛むことです。
市販薬や薬局製剤は製品ごとに表示されている効能・用法が異なることがあります。
実際に使用するときは、購入した製品の添付文書・説明書を優先してください。
桔梗湯が向いているのはどんな「のど」?
① のどが赤く腫れて痛い
飲み込むと痛い、扁桃腺が腫れているなど、腫れと痛みが前面に出るタイプは桔梗湯を考える場面のひとつです。
② のどの痛みに、ときどき咳も伴う
市販の桔梗湯製剤では、「体力にかかわらず使用でき、のどがはれて痛み、ときにせきがでるもの」といった適応表現がみられます。
③ 体質より「局所の症状」が目立つ
漢方薬では「虚証・実証」「冷え・熱」など体質を細かく確認して選ぶ処方も多くあります。
桔梗湯は比較的、のどの腫れ・痛みという局所症状を重視して選択される処方です。
「含み飲み」はどう考える?
桔梗湯についてよく知られている飲み方が、エキス剤をお湯に溶かし、少し冷ましてから、少量ずつ口に含みながら飲み込む方法です。
実際に、急性上気道炎による咽頭痛を調べた臨床研究でも、桔梗湯2.5gを温湯に溶かし、冷ました後に少量ずつ口に含んで嚥下する方法が用いられています。
イメージとしては、「一気に流し込む」というより、のどに触れる時間を意識しながら少しずつ服用する方法です。
ただし、これはすべての桔梗湯製品に共通する正式な用法という意味ではありません。
医療用・市販薬・煎じ薬では用法が異なりますので、医師・薬剤師の指示や製品の説明書を優先してください。
桔梗湯は「すぐ効く」の?研究結果も確認しておこう
桔梗湯は臨床では「のどの痛みに比較的使いやすい処方」として知られています。
しかし、「即効性が科学的に証明されている」と断定するのは適切ではありません。
2013年に報告された40名の前後比較研究では、桔梗湯服用後10分・30分で咽頭痛VASの低下が確認されました。
ただし、この研究にはプラセボ対照群がありませんでした。
その後、70名を対象にした2019年の二重盲検ランダム化比較試験では、服用10分後の咽頭痛について桔梗湯群とプラセボ群の間に統計学的な有意差は認められませんでした。
さらに2022年の多施設ランダム化比較試験でも、30分後の咽頭痛改善についてプラセボを有意に上回る結果は確認されていません。
研究の読み方:
「桔梗湯がまったく役に立たない」という意味でも、「飲めばすぐ効く」と証明されたという意味でもありません。
現時点では、急性上気道炎の咽頭痛に対する単回投与の即効性について、明確な優越性は確認されていないと理解するのが妥当です。
クリニカルパール|新見正則先生は口内炎をどう考えている?
新見正則先生の見解では、がん治療に伴って生じる難治性の口内炎に対して、標準的な治療を行ったうえで、漢方では桔梗湯を口の中にある程度含み、うがいするようにしながら飲み込む方法が役立つことがあると紹介されています。
また新見先生は、黄連を含む黄連湯・黄連解毒湯・半夏瀉心湯などについても臨床経験を紹介していますが、明確なエビデンスがあるという意味ではないことも説明されています。
ここで重要なのは、「クリニカルパール=承認された効能効果」ではないという点です。
医療用桔梗湯の承認効能は、扁桃炎・扁桃周囲炎です。
抗がん剤治療中の口内炎などに自己判断で使用せず、主治医・薬剤師・がん治療チームへ相談してください。
桔梗湯・銀翹散・麦門冬湯・半夏厚朴湯の違い
「のどが痛い」という一言だけでは、最適な漢方薬は決まりません。
中医学では、何が原因でのどに症状が現れているかを考えます。
| 漢方薬 | 選択の目安 | 中医学的な見方 |
|---|---|---|
| 桔梗湯 | のどの腫れ・痛みが中心 | 咽喉腫痛タイプ |
| 銀翹散 | 風邪の初期で、のどの痛み・熱感・口渇など | 風熱犯肺=熱性の外邪が肺・のどに影響するタイプ |
| 麦門冬湯 | 乾いた咳、のどの乾燥、声枯れなど | 肺陰不足=肺・のどの潤い不足タイプ |
| 半夏厚朴湯 | 異物感・つかえ感、ストレスで悪化するなど | 気滞痰阻=気の巡りと痰がのどにつかえるタイプ |
「痛いから桔梗湯」と単純に決めるのではなく、腫れ・熱感・乾燥・咳・痰・つかえ感・発熱などを一緒に確認することが漢方選びでは大切です。
「桔梗湯と銀翹散のどちら?」。
「乾燥が強いけれど桔梗湯でいい?」。
「ほかの漢方薬も飲んでいて甘草の重複が心配」。
ほどよい堂では、薬剤師・中医薬膳師が、中医学と現代医学の両面から症状・体質・服用薬を整理します。
全国からLINEで無料相談をご利用いただけます。
※相談内容によっては医療機関への受診をご案内する場合があります。
桔梗湯を使うときに注意したい「甘草」
桔梗湯で特に注意したい生薬が甘草(カンゾウ)です。
医療用ツムラ桔梗湯には、成人1日量に原生薬換算で甘草3.0gが含まれています。
甘草を含む薬を重ねて使用すると、グリチルリチン酸の摂取量が増え、偽アルドステロン症や低カリウム血症、ミオパチーなどのリスクが高まることがあります。
特に確認したい組み合わせ
- 芍薬甘草湯・補中益気湯・抑肝散など、甘草を含む他の漢方薬。
- グリチルリチン酸を含む医薬品。
- フロセミドなどのループ系利尿薬。
- 一部のチアジド系利尿薬。
こんな症状には注意
- むくみ。
- 急な体重増加。
- 血圧上昇。
- 脱力感。
- 筋肉のけいれん。
- 手足に力が入りにくい。
このような変化がみられる場合は漫然と継続せず、医師・薬剤師へ相談してください。
漢方薬によるセルフケアだけで様子をみない方がよい場合もあります。
- 呼吸が苦しい。
- 唾液も飲み込めないほど痛い。
- 強い腫れで口が開きにくい。
- 高熱や強い全身倦怠感を伴う。
- 片側だけ著しく腫れている。
- 脱水が疑われる。
- 症状が悪化している、または改善しない。
扁桃周囲膿瘍など、医療機関での治療が必要な病気が隠れている場合があります。
のどを「漢方×養生」で整える
漢方薬だけではなく、のどの粘膜が働きやすい環境をつくることも大切です。
① 乾燥を避ける
のどの粘膜は、外から入ってくる異物に対するバリアのひとつです。
こまめな水分摂取や室内の加湿を意識しましょう。
② 鼻呼吸を意識する
鼻には、吸い込んだ空気を加温・加湿し、異物を捕捉する働きがあります。
口呼吸が続くと、のどが乾燥しやすくなります。
③ 胃腸「脾=土」を弱らせない
中医学では、胃腸の消化吸収機能を「脾」の働きとして考えます。
脾は食べたものから気血を生み出す「土台」です。
体調を崩して食欲が落ちているときは、冷たい物や脂っこい物を無理に食べるより、温かい味噌汁、野菜スープ、おかゆなど消化しやすい食事を利用する方法があります。
普段から、よく噛むこと、発酵食品、海藻、きのこ、豆類などを取り入れ、食べるだけでなく「吸収できる腸」を育てていくことも、体全体の養生につながります。
桔梗湯を通販で購入する場合
桔梗湯は医療機関で処方されるほか、ドラッグストアや薬局、インターネットなどで購入できる製品もあります。
今回の商品リンクは、赤尾漢方薬局の薬局製剤「桔梗湯」煎じ薬10日分です。
桔梗2.0g・甘草3.0gを1日分として使用する煎じ薬で、効能は、のどが腫れて痛み、ときに咳が出る場合の扁桃炎・扁桃周囲炎とされています。
エキス顆粒とは煎じ方・服用方法が異なります。
購入後は必ず商品説明書に従ってください。
「まず商品を確認したい」という方はこちらから確認できます。
価格・在庫・配送条件は販売ページで最新情報をご確認ください。
※商品リンクにはアフィリエイトリンクを含みます。
※医薬品は用法・用量、使用上の注意を確認して正しく使用してください。
「自分にはどの漢方?」を一緒に整理したい方へ
のどの不調ひとつをとっても、漢方では「腫れて痛む」「乾燥する」「痰が絡む」「つかえる」「疲れると悪化する」など、状態によって考え方が変わります。
ほどよい堂では、単に商品を選ぶだけではなく、漢方×薬膳×腸活の視点から、現在の体質や生活習慣を整理しています。
養生の軸は、次の3つです。
- 栄養:からだをつくる材料を不足させない。
- 循環:栄養や酸素が届きやすい巡りを整える。
- 吸収=腸活:食べるだけではなく、受け取れる胃腸を育てる。
漢方薬だけに頼るのではなく、食事・睡眠・腸内環境・ストレスまで含め、「まず何から変えるか」を一緒に整理します。
「桔梗湯を選んでいいかわからない」。
「飲んでいる薬との併用が心配」。
「何度ものどを痛めるので、体質から見直したい」。
そんな方は、購入前でもお気軽にご相談ください。
薬剤師・中医薬膳師・薬膳素材専門士が対応します。
宮崎県川南町「ほどよい堂」。
店頭・オンライン相談に対応しています。
桔梗湯についてよくある質問
いいえ。
桔梗湯は特に「のどが腫れて痛む」状態を考える処方です。
乾燥、痰、発熱、つかえ感などが中心の場合は、別の処方が適することがあります。
市販の桔梗湯には「体力にかかわらず使用できる」とされている製品があります。
ただし、医療用では患者の証・体質や症状を考慮して使用することが記載されています。
医療用桔梗湯の承認効能は扁桃炎・扁桃周囲炎です。
口内炎への使用については臨床経験として紹介されていますが、承認効能とは区別して考える必要があります。
特にがん治療中の口内炎は自己判断せず、治療チームへ相談してください。
組み合わせによっては可能ですが、桔梗湯には甘草が含まれています。
芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散など甘草を含む処方を併用する場合は、重複量の確認が重要です。
症状や製品によって異なります。
改善がみられないまま漫然と継続するのではなく、添付文書に従い、必要に応じて医師・薬剤師へ相談してください。
まとめ|桔梗湯は「のどの腫れ+痛み」が重要なキーワード
桔梗湯は、桔梗と甘草という2つの生薬から構成され、のどが腫れて痛む扁桃炎・扁桃周囲炎に用いられる漢方薬です。
「お湯に溶いて、少量ずつ含みながら飲む」という方法は臨床研究でも用いられていますが、急性上気道炎による咽頭痛への単回投与について、プラセボを上回る即効性が確立しているわけではありません。
また、甘草を含むため、他の漢方薬やグリチルリチン製剤、利尿薬との組み合わせには注意が必要です。
「のどの痛み=桔梗湯」と決めつけず、腫れ、熱、乾燥、咳、痰、つかえ感、全身状態まで確認することが、漢方を上手に使うポイントです。
自分の症状に合う処方がわからない場合は、購入前に薬剤師へ相談することをおすすめします。
参考情報
- PMDA「ツムラ桔梗湯エキス顆粒(医療用)添付文書」。効能・効果、生薬構成、用法、副作用、相互作用を参照。
- Ishimaru N, et al. Kikyo-to vs. Placebo on Sore Throat Associated with Acute Upper Respiratory Tract Infection: A Randomized Controlled Trial. Internal Medicine. 2019.
- Ishimaru N, et al. Kikyo-to for Acute Upper Respiratory Tract Infection-Associated Sore Throat Pain: A Multicenter Randomized Controlled Trial. Journal of Integrative and Complementary Medicine. 2022.
- 新見正則医院「がんに漢方薬は効くの?補完医療として漢方薬を有効活用する方法」。口内炎に対する臨床的見解を参照。
医療情報について:
本記事は一般的な医療・漢方情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を目的とするものではありません。
症状が強い場合、悪化している場合、基礎疾患・妊娠・授乳・服用薬がある場合は、医師・薬剤師へご相談ください。



スポンサーリンク