下痢は、腸内の水分が過剰に排出されることによって、軟便または水様性の便が続く症状を指します。
下痢は一般的に、細菌やウイルスに感染すること、あるいは食物中に含まれる毒素によって引き起こされます。
また、腸の運動や消化機能に問題がある場合にも下痢が発生することがあります。
下痢の症状には、軟便や水様性の便、便意の頻繁な発生、腹部の不快感、吐き気、脱水症状(口渇、頭痛、倦怠感、尿の減少、便秘)、発熱、嘔吐などが含まれます。
下痢の治療には、水分補給、食事の改善、薬物療法などがあります。
水分補給は、脱水症状を防ぐために非常に重要です。
食事の改善では、脂っこい、辛い、刺激的な食べ物を避けることが推奨されます。
また、薬物療法には、止瀉薬・漢方薬などがあります。
下痢を予防するには、適切な手洗いや調理、食品の衛生管理、適切な栄養バランスの食事、十分な水分補給、ストレスの管理などが重要です。
また、海外旅行者など特定の状況下では、下痢を予防するための予防接種や医薬品の使用が推奨されることがあります。
重度の下痢や症状が持続する場合には、医師の診察を受けることが必要です。
下痢は中医学的に5つのタイプに分類
外感寒湿(がいかんかんしつ)
冬場に風邪を引いた時の胃腸炎に該当します。
脾胃(胃腸)に湿があるために嘔吐をともなうことがある。
「外感寒湿」の際に使用する漢方薬は次の通りです。
湿熱中阻(しつねつちゅうそ)
食べ過ぎなどの暴飲暴食に起因する下痢です。
特に脂っこいものや、甘いものの食べ過ぎが原因です。
そのほか、生ものや冷たいものを取りすぎると脾胃の調子が悪くなります。
渋り腹や肛門の灼熱感などの症状がある場合も多いです。
便は臭いが強く、粘り気があるような状態になります。
「湿熱中阻」の際に使用する漢方薬は次の通りです。
- 『三黄瀉心湯』:
みぞおちのつかえを解消するとされる ”瀉心湯類” のひとつで、熱邪が心に入り込んだ場合に有効な漢方薬です。
肝気鬱結(かんきうっけつ)
ストレスが原因で起こる下痢です。
胸協部や腹部がはって、苦しいような感覚があります。
排便すると症状が和らぐことが多いのも特徴の一つです。
食欲不振や情緒不安定などの症状を伴うことがあります。
「肝気鬱結」の際に使用する漢方薬は次の通りです。
- 『加味逍遥散』:ストレスなどによる自律神経の不調の改善に効果があります。
脾胃虚弱(ひいきょじゃく)
慢性的な下痢や軟便が続いている場合で、疲れやすく気虚症状を伴うことが多いです。
「脾胃虚弱」の際に使用する漢方薬は次の通りです。
- 『啓脾湯』:
茯苓(ふくりょう)や桂枝(けいし)などの生薬が含まれており、水分代謝を調整し、体内の余分な水分を排出する作用があります。
脾胃虚弱による消化不良や食欲不振などの症状に有効です。 - 『補中益気湯』:
胃下垂などの内臓下垂がある場合に使用すると良い。
腎陽虚弱(じんようきょじゃく)
冷えが強いことが原因で、明け方の起床時に下痢することが多く、このことを中医学的に ”鶏鳴瀉(けいめいしゃ)” と言います。
五更の刻(夜明け前)の下痢という意味で、”五更瀉(ごこうしゃ)” と言うこともあります。
「腎陽虚弱」の際に使用する漢方薬は次の通りです。
そのほか、『人参湯』や『大建中湯』には、おなかの冷えを改善する働きがあります。
腸管壁浸漏症候群(リーキーガット症候群)とは?
腸管壁浸漏症候群(ちょうかんへきしんろうしょうこうぐん、leaky gut syndrome)は、腸管壁が過剰に透過性を示す状態で、腸内の有害物質が体内に漏れ出すことによって引き起こされるとされる病態です。
正常な腸管壁は、微小な空隙や細胞間隙から、栄養素や水分、微生物などの必要なものを通過させ、同時に有害物質や細菌などの悪影響をもたらす物質を防止するバリア機能を持っています。
しかし、腸管壁に過度の炎症が生じた場合、そのバリア機能が弱まり、有害物質や細菌、アレルゲンなどの異物が血液中に漏れ出してしまいます。
この状態を腸管壁浸漏症候群と呼びます。
腸管壁浸漏症候群が引き起こす症状は、食物アレルギー、自己免疫疾患、疲労、不眠症、腹痛、下痢、便秘、不定愁訴などがあります。
腸内環境の改善や、適切な食生活やストレス管理などの対策が必要とされます。
ただし、腸管壁浸漏症候群という病態が科学的に確立されているわけではなく、診断や治療に関しては医学的に議論の分かれるところです。
そのため、症状がある場合には、まずは医師の診断を受け、適切な治療法を選択することが重要です。
慢性下痢で悩んでいる方へ
慢性下痢は、食事が原因であることがあります。
特に乳製品や小麦製品が原因であることが多いです。
乳糖不耐症とは、乳糖という糖質を分解することができない状態を指します。
乳糖は主に乳製品に含まれており、消化管で分解されてグルコースとガラクトースに分解されます。
しかし、乳糖不耐症の人は、乳糖を分解する酵素であるラクターゼの分泌が少なく、乳糖が腸内に蓄積され、腸内細菌によって発酵されることが原因で下痢や腹痛、膨満感などの消化器症状が現れることがあります。
乳糖不耐症の人は、乳製品を摂取すると症状が現れることが多いため、食事の中で乳製品を避けることが推奨されます。
また、ラクトースフリーの食品や、乳糖を分解する酵素を含むサプリメントなども利用されることがあります。
小麦にはグルテンというタンパク質が含まれており、グルテンアレルギーやセリアック病の人が小麦を摂取すると、下痢などの消化器症状が現れることがあります。
グルテンアレルギーは、免疫系がグルテンに反応し、アレルギー症状を引き起こす病気です。
セリアック病は、小麦などのグルテンを消化できないため、小腸に慢性的なダメージを与え、消化器症状を引き起こす自己免疫疾患です。
もし小麦を食べた後に下痢などの消化器症状が現れた場合は、グルテンアレルギーまたはセリアック病の可能性があるため、専門医に相談し検査を受けることをお勧めします。
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