動物との触れ合いは、私たちの心に安らぎ・癒しを与えてくれます。この動物が持つ癒しの力を借りて、心身を健康に導くのが「アニマルセラピー」です。
アニマルセラピーは、古代ローマ時代から馬を用いて負傷した兵士のリハビリが行われていた歴史があり、現在では人にとって身近な動物である犬を用いたセラピードッグの訪問が、高齢者施設や病院などで行われています。
日本では、セラピーと言うと単なる癒しと思われ勝ちですが、実は本来は「治療・療法」と言う意味なのです。
アニマルセラピーとは、本来「動物が医師を通して患者の機能向上の手助けをする」事が目的です。
日本アニマルセラピー協会では、既に国立病院の緩和ケア病棟を訪問し、患者さんのリハビリのお手伝いや痛みの軽減などに、実績を挙げています。
アニマルセラピーの中でも、医療現場で医療従事者の主導のもとに動物を用いる治療を「動物介在療法」と言います。
(引用:NPO法人日本アニマルセラピー協会)

動物を単純に見ているだけでも、癒されたり・元気が出たりするよね!

認知症に対する「アニマルセラピー」の効果

動物とのふれあいが人にもたらす効果については、「身体的効果」と「精神的効果」が過去に報告されています。
具体的には、社会性の改善効果として動物による話題提供、会話の促進をする「社会的潤滑油効果」があります。
例として、「高齢者が犬を連れて散歩していると、連れていないときより会話が増える」「他者との交流の機会のない長期療養患者や施設入所者が、動物の訪問をきっかけに会話や交流ができる」などがあげられます。
また、精神的作用として動物は人々に対して自尊心、責任感、必要とされている気持ち、自立心や安堵感、笑いや楽しみをもたらし、ストレスや孤独感を癒すというストレスの緩衝作用があることから、認知症の方や高齢者の社会性を高め、介護者の負担を軽減する可能性が期待されています。
(引用:循環器心身症の心身医学的アプローチ法 飯田俊穂Jpn J Psychosom Med60:417-424, 2020)
ペットの「チカラ」には無限の可能性が!

家庭でペットを飼う事も、アニマルセラピーの一種です。事実、ペットを飼っている人は飼っていない人より、年間20%前後病院に行く回数が減ったと言うデータがあります。
ドイツでは7500億円、オーストラリアでは3000億円もの医療費が、ペットの影響によって削減されています。
生理的・身体機能的作用として人が動物に対しての働きかけをしようとする意欲から、日常の運動や動作が多くなり、動物に対する話しかけにより発語が増え、「飼い犬との時間は高齢者の血圧を低下させる」「ペットを飼っている人のほうが飼っていない人より収縮期血圧および血中コレステロール値が低い」という報告もあります。
アメリカ心臓病学会の 2013 年の報告でもペットを飼うこと、特に犬と暮らすことは、心血管病リスクの低下においてリーズナブルであるとのエビデンスを出しています。
循環器心身症に限らず循環器疾患全般においても動物とのふれあいの効果は、予防、長期予後の観点からも期待できる可能性が期待されています。
(引用:循環器心身症の心身医学的アプローチ法 飯田俊穂Jpn J Psychosom Med60:417-424, 2020)
セラピー犬とは

アニマルセラピストと共に、高齢者施設、障がい者施設、学校、病院、養護施設、刑務所などを訪問し、人々の心を癒すお仕事をする犬のことをいいます。
基本的なしつけがされており、人が大好きな犬たちです。

アニマルセラピーの活動の一部を紹介するね!アニマルセラピーについてもっと知りたいときは『日本アニマルセラピー協会NPO法人』のホームページを見てみるといいよ!

難病の子を支えるワンコ。東京の病院で初めて導入されたファシリティ・ドッグの1年間のダイジェストです。
セラピー犬の地位向上がこれからの課題!

欧米ではすでに多くの医療現場において、セラピー犬は治療・リハやビリ等で大活躍しており、その効果は目を見張るものがあります。
セラピー犬による医療費の大幅削減の報告もされています。一方、日本ではセラピー犬の地位がまだ確立されておらず、セラピー犬の認知度が低いのが現状です。
セラピー犬の医療犬としての活躍の場を広げ、また、セラピー犬を公共施設等に同伴できるようにするため、セラピー犬について多くの方にご理解いただけるようセラピー犬の地位向上が期待されています。
(引用:NPO法人日本アニマルセラピー協会)
人々を癒やしてくれるセラピー犬ですが、犬にはストレスにならないの?


人には癒しを与えてくれるセラピー犬だけど、ワンちゃんはどう感じているのかな?

小児がん病棟のセラピー犬を科学的に調査、最大規模の研究結果が次のように発表されました!
結論から話すと、セラピー犬は「仕事」でストレスを受けておらず、むしろ楽しんでいる場合が多いみたいです。
研究結果の詳細は、次の通りです。
学術誌「Applied Animal Behaviour Science」に掲載された研究によると、小児がん病棟のセラピー犬は100人以上の患者を訪問し、26匹のセラピー犬が参加しています。
研究チームが測定したのが、イヌの唾液に含まれるコルチゾールの値です。このホルモンは、ストレスに反応すると値が上昇する傾向があります。
その結果、病院にいるときと自宅にいるときで、研究に参加したセラピー犬のコルチゾール値に変化は見られず、セラピー犬が特にストレスを受けているわけではないことが明らかになっています。

ただ、セラピー犬に向いた性格の犬と向いていない犬がいることも事実であって、向いていない犬にはセラピー犬としての仕事はストレスにもなり得るということだったよ。
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