生活スタイルを改善することで、認知機能や認知症のリスクを低下できるという研究が、米ロサンゼルスで7月に開催された「2019年アルツハイマー病協会国際会議(AAIC 2019)」で発表されました。
その内容は、『認知症の遺伝因子や汚染など環境因子があっても、生活スタイルを改善することでリスクを低下でき、記憶力を改善できる可能性がある』ということです。

生活習慣を変えることで、認知症ができるって話を聞いたけど、どんなことに注意したらいいの?

2019年アルツハイマー病協会国際会議で、おすすめの生活習慣が発表されたので紹介しますね!

アルツハイマー病協会国際会議(AAIC)とは

アルツハイマー協会国際会議とは、認知症科学の進歩を目的とした最大かつ最も影響力のある国際会議です。
毎年、AAIC は、予防と治療の方法およびアルツハイマー病の診断の改善につながる発見を目標に、世界有数の基礎科学と臨床の研究者、次世代の研究者、臨床医や看護研究コミュニティを招集しています。
認知症を予防するおすすめの生活習慣・TOP5

①運動を習慣として行う

運動による神経新生、神経栄養因子の発現、アミロイドβクリアランスの向上などが動物実験で明らかにされてきています。実証研究でも、運動が認知機能向上に対して有効であることが確認されており、認知症予防を目的とした運動の実施が推奨されています。
(参考:島田裕之 – 医学のあゆみ, 2020 – pieronline.jp)
②健康的な食事をする

認知症のリスクを減らす食事の要件は、十分な栄養とバランスの取れた食事です。
栄養素の3つの主要なタイプに関して、炭水化物については、主にブドウ糖をゆっくりと放出する低グリセミック指数(低GI)の食品を摂取するのが良いようです。
これらには、濃い色の野菜、果物、豆、キノコ、海藻が含まれます。白砂糖の摂取量を減らすことも重要です。
脂肪については、主に「DHAを多く含む青魚」、「オメガ3脂肪を多く含む亜麻仁油と荏の油」、「オメガ9脂肪を多く含むオリーブオイル」を摂取することが推奨されています。
たんぱく質については、主に卵と大豆を摂取することが推奨されています。肉や魚介類を食べることも大切ですが、ソフトドリンク、トランス脂肪酸(マーガリン)は避けたほうがよいとされています。
(参考:森田宏 – 薬史学雑誌, 2020 – jstage.jst.go.jp)
③十分な睡眠をとる

認知症の中で最も発症割合が多いアルツハイマー型認知症は、脳内にアミロイドβと呼ばれるタンパク質が蓄積し、それが脳細胞を圧迫・死滅させてしまうことで発症します。
2015年には、学術誌の「ネイチャー・ニューロサイエンス」において、睡眠不足が続くと脳内にアミロイドβの蓄積が進み、睡眠の質を悪化させ、それによってさらにアミロイドβが溜まりやすくなると発表されています。
④喫煙しない

喫煙と認知症の関係については、久山町研究によって明らかになりました。中年期と高齢期の喫煙は、認知症発症のリスクが有意に関連することや、中年期の喫煙は、アルツハイマー型認知症と血管性認知症の発症リスクと有意に関連することが分かりました。
(参考:九州大学 久山町研究室は、福岡県糟屋郡久山町の住民を対象に脳卒中、心血管疾患などの疫学調査を行っています)
⑤アルコール摂取を中等度に抑える

アルコール依存症および大量飲酒者には、脳萎縮が高い割合でみられること、大量に飲酒したりアルコールを乱用した経験のある人では認知症になる人が多いといった疫学調査結果から、大量の飲酒は認知症の危険性を高めることが示されています。
一方で、少量ないし中等量の飲酒は、認知症の原因にはならないのみならず、逆に認知症の予防になる可能性があるといわれています。
(参考:厚生労働省e-ヘルスネット)
まとめ【認知症予防に関する研究で明らかになったこと】
- 今回挙げられた健康的な生活スタイルを4~5項目実行すると、何もしないか1つだけを実行した場合に比べ、アルツハイマー型認知症リスクを60%低下できる。
- 健康的な生活スタイルを実行すれば、アルツハイマー病の遺伝的リスクを相殺できる可能性がある。
- 支援を受けて認知刺激を通じて認知予備力を高めれば、脳の老化を抑えられる可能性がある。
- アルコールの過剰摂取は、とくに中年女性の認知症リスクを大きく高める。
- 若年期~中年期に喫煙習慣があると、早ければ40歳代から認知障害があらわれる可能性がある。
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