喘息を患っている患者さんは吸入薬が処方されることが多いと思いますが、お薬をもらう際に薬剤師から吸入後にうがいをする様に説明された経験があるかもしれません。
今回は吸入薬使用後の ”うがい” の必要性について説明していきます。
気管支喘息の治療薬である吸入薬のなかに「ステロイド剤」と「β2刺激薬」があります。
ステロイド剤は炎症を強力に抑える働きがあるのに対して、β2刺激薬は気管支平滑筋のβ2受容体を刺激することによって収縮した気管支平滑筋の緊張を和らげる(気管支を拡げる)薬剤です。
「ステロイド剤」と「β2刺激薬」でうがいの必要性が異なるのはなぜ?
ステロイド吸入による副作用とは?【「嗄声(声がれ)」と「口腔内カンジダ」】
ステロイド吸入薬で最も多い副作用が、口の中に真菌(カビ)が繁殖する「口腔内カンジダ症」と、声が嗄れる「嗄声」です。
「嗄声」の原理にはいくつか説がありますが、薬剤の成分であるステロイドが声帯に付着することで、局所的なステロイド筋症(ミオパチー)が起きていることが示唆されています。
声が出しにくく不快な副作用ですが、放置しても特に大きな障害にはつながりません。薬を中止すればすぐに元に戻ります。
そのため、薬を中止すると喘息が悪化する恐れがあるため、通常は ”うがい” を徹底するか、薬を減量・変更するといった対応をします。
高齢になればなるほど「嗄声」の出現率が高くなることも報告されています。様々な要因が考えられますが、高齢者ほど上手にうがいができていないという可能性があります。
この嗄声という副作用の場合は、”吸入薬を使用した後にしっかり「うがい」をする” ことで大半を予防することができます。
うがいをする際は口の中をゆすぐ ”グチュグチュうがい” だけでなく、喉の奥も洗い流すような ”ガラガラうがい” をすることが必要です。
吸入薬使用後は ”グチュグチュうがい” と ”ガラガラうがい” の両方を一緒にするように心がけてください!
「β2刺激薬」による全身作用とは?
β受容体は心臓をはじめ様々な組織に存在しているため、「飲み薬」を使うと血液中に吸収されて全身をめぐるため、動悸や手の震えなど全身的に様々な副作用を引き起こす可能性があります。
「吸入薬」は必要な気管支でだけにピンポイントで作用するので、副作用を減らすことができる薬ですが、口の粘膜に薬が残ったまま放置していると、粘膜から薬が微量ながら吸収されてしまうことがあります。
特に、飲み込むのではなく口の粘膜から吸収された場合、肝臓を通らず直接全身を巡るため、副作用は起こりやすくなります。
こうした予期せぬ全身作用を防ぐために、口の中に残った薬は「うがい」によって洗い流す必要があります。
薬剤師としてのアドバイス:吸入薬使用後のうがいが難しければ食前に吸入をしましょう!
小さなお子さんや高齢者はしっかり「うがい」をすることが難しいこともあります。そういった場合に、特に使用時間帯の指示がなければ、食前に吸入することをお勧めしています。
吸入後に食事をすればその時の飲食によって口や喉に付着した薬はとれてしまうため、実質的には「うがい」と同じ効果が得られます。
口の中に残った薬を飲みこんだとしても、微量なため、それによって重篤な障害につながることはありません。
吸入薬を中止すると呼吸困難などの重篤な症状を招き死亡する恐れもあります。
絶対に自己判断で吸入薬を中止しないようにしてください。
プラスαの情報:吸入では全身の副作用は起きにくいのはなぜ?
吸入剤でのステロイド・気管支拡張剤は、内服の薬と比べて使用量が単位が異なるほどに少なく済み、ピンポイントで肺や気管支だけで作用するため全身の副作用を起こさないのが特徴です。
また、そのごく少量も多少は吸収されることもありますが、全身を巡る前に90~99%が肝臓で分解されてしまうため、全身で作用することは通常起こりません。
内服剤は全身に血液を介して運ばれてしまうため使用量も多くなり、治療には全く関係ない臓器にまで影響が出る可能性があります。
治療したい場所に少量で到達する優れた投与法である吸入薬ですが、内服剤の方が効果が高いとか吸入は面倒など固定観念の強い方にはなぜだか不評なのです。
吸入薬は、きちんと使用さえできればメリットが多い優れた薬剤ですよ!
喘息治療の際、吸入薬による治療はいつまで続けるのがよいの?
喘息のため吸入薬の治療をしています。
いつまで続ければいいですか?
喘息患者さんの多くは室内のダニ、ほこりなど喘息を悪化させる原因を減らすことによって症状は軽減します。
それに加えて正しい薬物治療を続けることによって、健康人と同等な家庭生活、社会生活を送ることができます。
しかし喘息患者さんでは症状が無くても気道の炎症が慢性的に続いており、何度も炎症の増悪・寛解を繰り返すと気道壁のリモデリング(気管支壁が厚くなる)が起こります。
そのため、急性の気管支収縮が起こりやすくなります。
その結果喘息が重症化、難治化し、呼吸機能が低下してきます。
そうなると、結局は定量定期使用している場合より、もっと薬剤使用量が増えてしまったということはよくあることなのです。
喘息治療の基本は症状が良くなっても、もとにある気道炎症を抑える治療は継続することで重症化を防ぐ事が一番大切なのです。
自己判断で勝手に治療をやめたりせずに、医師の指示を受けるようにして下さいね!
「宮崎県川南町」に位置する「ほどよい堂」において、「薬剤師×中医薬膳師×ペットフーディスト」として、健康相談を行っています。
代表の河邊甲介は、漢方医学、薬膳、そして腸活を組み合わせた独自のアプローチで、個々の健康に寄り添います。
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