通常、保険調剤薬局に処方せんなしで、「いつもの薬が欲しい」と言っても薬剤師からは、「処方せんがなければお渡しできません!」と説明されると思います。
これは、「保険(調剤)薬局」においては、厳守しなければならない規則ですので、どうすることも出来ません。
ところが、処方箋が無くても「病院で処方してもらっているお薬の一部」を購入することができる『零売(れいばい)薬局』と呼ばれる薬局があるのです。
患者さんにとって、便利な薬局ですが、まだまだ店舗数が少ないというのが現状です。
『零売薬局』の存在意義について、賛否両論あるため、今後どのようになっていくのか分からないのが現状です。
ただ、身近な存在になる可能性もありますので、零売薬局の基礎知識やメリット・デメリット、問題点などを述べていきます。

「病院に行ってもらういつものお薬」なんだけど、なかなか病院に行く時間が作れないし、何かいい方法はないのかな~?

そうだよね~。
会社などで働いている人は、会社の勤務時間と病院が開いている時間はほぼ一緒だから、休んだり、中抜けしたりしないと受診できないことはハードルが高いですよね…。

そのような時には、まだまだ全国に数えるくらいしかないのですが、処方箋が無くても病院で処方してもらっているお薬の一部を購入できる『零売薬局』と呼ばれる薬局があるのです。

そんな薬局のことは知らなかったし、『零売薬局』なんて聞いたこともなかったよ。

今回は『零売薬局』について解説してみますね!

「零売(れいばい)」とはどんな意味?

『零売』とは販売の一形態であり、「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」を処方箋がなくても販売することを指します。
分割販売と呼ばれることもあります。
「処方箋医療品」は原則として零売することはできません。

「処方箋医薬品」とは、医師の処方箋を必要とし、薬剤師による調剤によって処方される医薬品のことです。

『零売薬局』では、病院などで使用される医療用医薬品約15,000種類の内、処方箋なしでの販売が認められた医薬品約7,300種類を、薬剤師のカウンセリングのもと販売することができます。
零売(れいばい)できる薬とできない薬の区別とは?

医療用医薬品は、「処方箋医薬品」と「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」の2種類に分類されます。
「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」は、処方箋がなくても薬剤師の判断で個別に売買ができます。
逆に、「処方箋医薬品」はその名の通り、医師が処方する処方せんがなければ販売することができません。
医療用医薬品が、どちらに区分されているのかは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構「Pmda」のホームページ『医療用医薬品の添付文書情報』で調べることが出来ます。
例えば、有名な薬の「ロキソニン®」、「カロナール®」、「ガスター®」、「ムコスタ®」、「セルベックス®」、「アレグラ®」・・・。
ビタミン剤や風邪薬、漢方薬、塗り薬、湿布などは、ほとんどが「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」に含まれます。
零売(れいばい)のメリット
零売のメリットは、なんといっても「処方箋がなくても医療用医薬品が購入できる」点です。
処方せんがなくても、お薬を販売できるので、病院に行って医師に診てもらう必要がありません。
薬剤師と患者さんが対面し、販売するというシンプルな形です。
なかなか病院に行く時間が取れない方でも、すぐにお薬をもらうことができます。

「零売薬局」の利用は、お薬をもらうまでの所要時間の短さも大きなメリットだよね!
病院で診察してから薬局で薬をもらうまでには、かなりの時間がかかるよね。病院によっては特に検査や診察をしないのに1時間以上待つ場合もありますよね。
数時間も待って、診察時間は「お変わりありませんか?」の数分みたいな…。

新型コロナをはじめ、インフルエンザなどの感染症が流行っているときは、病院に長居したくないですよね。

零売(れいばい)のデメリット
第一に、大きな副作用が起きたときの救済方法が不十分である点が挙げられます。
零売で購入した薬が原因で副作用が生じてしまった場合、「医薬品副作用被害救済制度」の対象にならない可能性があるのです。
医療品副作用被害救済制度とは、薬を正しい方法で使ったにも関わらず起こってしまった副作用に対する補償のことです。
健康被害を受けてしまった人に対して、医療費や生活費の補償、年金を給付するなどの救済が行われます。

この辺りは今後、国の方策によって変更になる可能性があると思いますが、現段階では、「救済の可否は微妙な」感じですよね…。
『零売』の場合、料金はどれくらいかかるの?
病院に行って医師による受診がないため、健康保険は利用できません。
そうなると一見、支払額が高いのでは?と思いますが、「病院に支払う分+調剤薬局で支払う分」を合わせると、ほとんど変わらないか、安くなることもあります。
というのは、病院では「初診料(再診料)・診察料・処方せん発行料など」様々な診療報酬が発生します。
また、調剤薬局では、「調剤基本料・調剤料・薬剤服用歴管理指導料など」様々な調剤報酬が発生しています。
つまり、「病院を受診して処方せんを使った健康保険(自己負担額:1~3割負担)の場合」には、多くの手数料のようなものが発生しているので、単純に『お薬1錠の薬価×薬の数=支払額』となる「零売薬局」での支払いの場合と比べても、支払額は高くはならないわけですね!

処方せんをもらう場合と零売の場合では、料金のイメージはこのような感じになります。

医療費削減と零売薬局の将来展望
現在、「医療保険においての湿布薬の処方枚数制限」、「セルフメディケーション税制の施行などが行われています。
また、「漢方薬・花粉症薬・うがい薬など」一部の薬を医療保険の適応から外して全額自己負担にすべきなど医療費を削減するために様々な方策が検討されています。
2005年に厚生労働省が、零売を条件付きで容認したことも、「処方箋医薬品」を減らし、爆増している医療費をどうにか削減したいという思いがあるではないかと推測します。
そのため国の方策次第では医療保険を利用しないで済む「零売薬局」が増えていく可能性はあると思いますが、そうなると直接「零売薬局」でお薬をもらう患者さんがふえるので、病院・診療所は、患者さんが少なくなった分、収入が減ることになります。

そうなれば当然、医師からの反発があがってくることは間違いないと思います。零売に関しては、医師の処方権との兼ね合いなど、クリアしなければならない問題点は多そうですね。


現在、「零売薬局」を開設した経営者などのコメントでは、まずお薬(医療用医薬品)を仕入れる卸しさんを見つけるのが大変とのこと。
処方箋を扱う調剤薬局にお薬を卸している大手卸し会社は、なかなか取引してくれないんだって!

これは、個人的推測の域なんですが、病院・診療所の経営圧迫につながる可能性がある「零売薬局」に加担したという目で医師会に見られてしまう可能性があるため、現在はごく少数派の「零売薬局」とは距離を保っているのだろうと・・。
日本初!【株式会社GOOD AID】が「零売」専門薬局チェーン「セルフケア薬局」を立ち上げました!

代表取締役社長
服部 雄太

零売専門の「セルフケア薬局」の出店では、駅ナカを中心に加速していくとのこと。
2020年11月『JR東日本スタートアッププログラム2020』の採択企業にも選ばれているよ。

代表取締役社長
服部 雄太
当社は2024年9月期に株式上場を目指しており、その時点ではグループ全体で約200店舗になっているイメージです。


この様にチェーン店が出てくることで、世間の認知度もあがって市場の流れが変わってきやすくなるので「零売薬局」が身近な薬局になってくる可能性も出てきましたね。
セルフメディケーション税制とはどんな制度?【節税効果アリ!】
セルフメディケーション税制とは、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができるものです。

世帯での年間購入額が『1万2000円以上』の場合、セルフメディケーション税制の利用が可能になります!

節税してもらうためには、ドラッグストア等で医薬品を購入する際に、セルフメディケーション税制対象商品であるかの確認や、レシートを保存しておくことが大切で、確定申告をする必要があるんだよね!


「セルフメディケーション税制」について税理士の大河内薫さんがわかりやすく解説してくれています!参考にしてみてくださいね!

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