結論からいうと、「余っています」と伝えただけで手数料が加算されるわけではありません。
ただし、残っている薬を確認し、医師の指示や薬剤師からの照会などに基づいて実際に処方日数を変更した場合には、一定の条件のもとで「調剤時残薬調整加算」という診療報酬が加算されることがあります。
しかも、この制度は2026年6月の診療報酬改定で大きく変更されています。
この記事では、薬剤師の立場から「薬が余ったときにどうすればいいのか」「薬局で減らすといくらかかるのか」「診察時に伝えたほうがよいのか」を、2026年時点の制度に合わせて分かりやすく解説します。
現在は、残薬調整について「調剤時残薬調整加算」が新設されています。
古い記事やSNSには2020年・2022年・2024年当時の点数が残っているため、情報の年代には注意してください。
・「余っています」と言っただけで加算されるわけではありません。
・薬局で実際に残薬を調整し、一定の算定要件を満たすと「調剤時残薬調整加算」が加わる場合があります。
・一般的な区分は30点、在宅患者や一定のかかりつけ薬剤師による対応などは50点です。
・診察前に残薬数が分かっているなら、まず診察時に医師へ伝えると処方を調整しやすくなります。
・薬を自己判断で中止したり、次回分として勝手に使ったりするのは避けましょう。
- 薬が余っていることを薬局で言うと「手数料」がかかる?
- 2026年6月から制度が変更|「重複投薬・相互作用等防止加算」は廃止
- 調剤時残薬調整加算はいくら?
- 重要|薬を減らしたから必ず30点・50点が加算されるわけではない
- なぜ薬剤師は勝手に薬を減らせないの?
- 薬が余っているなら、診察時に医師へ伝えるのがおすすめ
- でも、残薬を医師に言うのが気まずい……という方へ
- 薬が余る原因は「飲み忘れ」だけではありません
- 残薬調整は「お金を取られるだけ」ではない
- 残薬が大量にある場合はどうする?
- 飲み間違いが多いなら「一包化」なども相談できます
- 自己判断で薬を中止・減量しないでください
- お薬手帳は「残薬を減らす」ためにも役立つ
- 薬局で残薬を相談するときの伝え方
- よくある質問|薬局の残薬調整と料金
- まとめ|残薬は「隠すもの」ではなく、治療を見直す情報
- 薬剤師としてお伝えしたいこと
- 参考資料・公的情報
薬が余っていることを薬局で言うと「手数料」がかかる?
「今回はこの薬が20錠残っているので減らしてください」と薬局で伝えることがあります。
このとき、「余っていると伝えただけで料金を取られる」と理解されることがありますが、正確ではありません。
現在の制度では、患者さんや家族から残薬の情報を確認し、医師の指示または処方医への確認に基づいて、実際に調剤日数を変更するなど一定の条件を満たした場合に、「調剤時残薬調整加算」が算定されることがあります。
「薬が余っています」と相談する行為に対する罰金やペナルティではありません。
残薬を確認し、必要な調整を行う薬剤師の薬学的管理を診療報酬として評価する仕組みです。
2026年6月から制度が変更|「重複投薬・相互作用等防止加算」は廃止
元の記事が公開された2020年当時は、「重複投薬・相互作用等防止加算」という名称が使われていました。
その後も診療報酬改定が行われ、2026年度改定ではこの加算そのものが廃止されています。
2026年6月1日以降は、残薬調整に関する評価として新たに「調剤時残薬調整加算」が設けられました。
また、重複投薬や相互作用など、残薬以外の薬学的問題を確認して処方変更につながった場合については、「薬学的有害事象等防止加算」という別の仕組みになっています。
| 時期 | 残薬調整に関する主な評価 | ポイント |
|---|---|---|
| 2026年5月まで | 重複投薬・相互作用等防止加算 | 残薬調整は旧制度の中で評価 |
| 2026年6月から | 調剤時残薬調整加算 | 残薬調整を独立して評価する仕組みに変更 |
| 2026年6月から | 薬学的有害事象等防止加算 | 重複投薬・相互作用など残薬以外の薬学的問題を評価 |
調剤時残薬調整加算はいくら?
2026年度診療報酬改定では、調剤時残薬調整加算は条件によって30点または50点とされています。
医療保険の診療報酬では原則として1点=10円として計算されるため、30点なら300円、50点なら500円相当の医療費です。
| 主な区分 | 点数 | 医療費としての金額 | 3割負担の場合の目安 |
|---|---|---|---|
| 通常の外来患者など 一定の特別区分以外 | 30点 | 300円 | 約90円 |
| 一定の在宅患者や かかりつけ薬剤師による対応など | 50点 | 500円 | 約150円 |
※上記は「加算部分だけ」を単純計算した目安です。
実際の窓口負担額は年齢、保険の負担割合、公費負担、ほかの調剤報酬、薬剤料、調整した薬の日数などによって変わります。
重要|薬を減らしたから必ず30点・50点が加算されるわけではない
ここは特に誤解されやすいところです。
2026年度の「調剤時残薬調整加算」には算定要件があります。
基本的には、患者さんや家族などから得た情報によって残薬が確認され、医師の指示または医師への確認結果に基づき、残薬調整のため7日分以上相当の調剤日数が変更された場合が対象となります。
ただし、薬剤師が患者さんの服薬状況などから必要性があると判断し、医師の指示等に基づいて6日分以下の調整を行った場合でも、その理由を診療報酬明細書へ記載することで算定できる場合があります。
実際にどのような残薬調整が行われたか、どの算定要件に当てはまるかによって異なります。
なぜ薬剤師は勝手に薬を減らせないの?
処方箋は医師が診察したうえで決定した薬の種類・量・日数などを記載したものです。
そのため、薬剤師が自分の判断だけで「この薬は余っているから20日分減らしておきます」と自由に変更することは原則としてできません。
処方内容に確認すべき点がある場合には、薬剤師から処方医へ連絡し、確認することがあります。
これが一般に「疑義照会」と呼ばれるものです。
2026年からは処方箋の「残薬確認欄」も見直された
2026年度改定では、処方箋の残薬に関する欄も見直されています。
医師側の指示によって、薬局で残薬を確認した場合に「医療機関へ疑義照会した上で調剤する」方法だけでなく、「薬を減量した上で医療機関へ情報提供する」という運用も可能になる仕組みが示されています。
つまり、あらかじめ医師から処方箋上で指示されている場合には、残薬調整をより円滑に行えるケースがあります。
ただし、薬局がどんな場合でも自由に処方量を変えられるという意味ではありません。
薬が余っているなら、診察時に医師へ伝えるのがおすすめ
残っている薬の数をある程度把握できている場合には、次の診察時に医師へ伝える方法が分かりやすいでしょう。
例えば、「血圧の薬が14錠残っています」「便秘薬は30錠くらい残っています」など、薬ごとの残数を伝えます。
医師がその場で必要性を判断し、今回の処方日数を調整できれば、薬局で改めて残薬調整を行う必要が少なくなります。
① 薬の名前
② 何錠・何包残っているか
③ なぜ残ったのか
④ 飲んだときに困ったことがなかったか
スマートフォンで薬と残数を写真に撮っておく方法でも構いません。
でも、残薬を医師に言うのが気まずい……という方へ
「飲み忘れたことを怒られるのでは?」
「自己判断で飲まなかったことを知られたくない」
そう考えて、残薬を伝えにくい方もいるかもしれません。
しかし、残薬は決して珍しいことではありません。
厚生労働省も、薬が余っている場合には医師や薬剤師へ相談するよう案内しています。
大切なのは、「余っていることを隠す」ことではなく、なぜ余ったのかを確認することです。
そこに、今後の治療を安全で続けやすいものにするヒントが隠れているからです。
薬が余る原因は「飲み忘れ」だけではありません
残薬が発生する背景には、さまざまな理由があります。
- 単純に飲み忘れた。
- 外出時に薬を持って行くのを忘れた。
- 昼の薬だけ仕事中に飲めない。
- 副作用が心配で飲む回数を減らしていた。
- 症状が良くなったので自己判断で中止した。
- 頓服薬が使われずに残っている。
- 受診間隔と処方日数が合っていない。
- 複数の医療機関から似た薬が処方されている。
- 薬が多すぎて、いつ何を飲むのか分からなくなった。
つまり、残薬は単なる「余った薬」ではありません。
服薬方法が今の生活に合っているのかを見直すサインとして活用できます。
残薬調整は「お金を取られるだけ」ではない
旧記事では、残薬調整の加算によって「薬を減らしたのに支払額が増える」というケースを紹介していました。
実際、薬価が非常に安い薬を少量だけ減らした場合には、加算部分だけを見ると薬剤料の減少額を上回る可能性があります。
しかし、これだけで「残薬調整は損」と判断するのは適切ではありません。
残薬を調整することで、不要な薬の受け取りを減らしたり、重複・飲み間違いを確認したり、服薬しやすい方法へ変更できることがあります。
薬の種類・薬価・減らす日数によっては、加算があっても全体の窓口負担が下がることもあります。
残薬が多い場合には、その背景に飲み忘れ、副作用、飲みにくさ、服薬回数の問題などがないかを薬剤師と一緒に確認してみましょう。
残薬が大量にある場合はどうする?
薬が数種類あり、袋もバラバラで、自分では何がどれだけ残っているか分からない場合もあります。
そのようなときは、一人で整理しようとしなくても構いません。
まず、普段利用している薬局へ相談してください。
必要に応じて薬を確認し、現在の処方内容と照らし合わせながら、残薬の整理方法を検討します。
持参する量が多い場合には、薬局側にも確認時間が必要になるため、事前に電話などで相談しておくとスムーズです。
薬を持って行くときにあると便利なもの
- 余っている薬。
- 現在のお薬手帳。
- 薬の説明書・薬袋。
- 複数の医療機関を受診している場合は、それぞれの薬の情報。
- 市販薬やサプリメントを使っている場合はその名称。
飲み間違いが多いなら「一包化」なども相談できます
「朝の薬と夜の薬を間違える」
「種類が多くて管理できない」
「どれを飲んだか分からなくなる」
という場合には、一回に飲む薬をまとめる「一包化」などが選択肢になることがあります。
ただし、一包化がすべての人に向いているわけではありません。
自分で薬を調節する必要がある場合や、湿気・光に弱い薬など、薬の性質によって適さないケースもあります。
医師・薬剤師に相談しながら決めましょう。
自己判断で薬を中止・減量しないでください
「余っているから今日は飲まない」
「血圧が良かったから半分にする」
「体調が良いのでしばらく中止する」
といった自己調整は、薬によっては治療効果を低下させたり、症状を悪化させたりする可能性があります。
また、薬の種類によっては急に中止しないほうがよいものもあります。
飲みにくさ、副作用の疑い、回数が多すぎるなど困っていることがあれば、自己判断で調整する前に医師または薬剤師へ伝えてください。
お薬手帳は「残薬を減らす」ためにも役立つ
お薬手帳は単なる薬の記録帳ではありません。
複数の病院や薬局を利用している場合でも、現在使っている薬を医師・薬剤師が確認しやすくなります。
特に高齢になると、複数の診療科から薬が処方されることも珍しくありません。
お薬手帳を一冊にまとめることで、重複投薬や飲み合わせ、残薬などを確認しやすくなります。
電子版お薬手帳も活用できます
厚生労働省では電子版お薬手帳の活用も進めています。
スマートフォンで服薬情報を管理できるため、紙のお薬手帳を忘れやすい方には便利な選択肢です。
ただし、市販薬やサプリメントなどの情報が自動ですべて把握されるとは限りません。
市販薬・健康食品・サプリメントを使用している場合には、自分から医師・薬剤師へ伝えることも大切です。
薬局で残薬を相談するときの伝え方
特別な言い方をする必要はありません。
次のように伝えれば十分です。
「昼の薬を仕事中に飲めないことが多く、20包くらい余っています。」
「便秘薬は必要なときだけ飲んでいるので、かなり残っています。」
「薬が多くて、何がどれだけ残っているか分からなくなりました。」
特に重要なのは、「何錠残っているか」だけでなく、「なぜ残ったか」も伝えることです。
原因が分かれば、薬剤師からより具体的な提案がしやすくなります。
生活時間、食事、仕事、睡眠、胃腸の状態などによって、服薬方法が負担になっていることもあります。
「飲めていないこと」を隠すより、「なぜ飲めないのか」を相談することが、治療を続けやすくする第一歩です。
よくある質問|薬局の残薬調整と料金
残薬があると話しただけで、自動的に調剤時残薬調整加算が算定されるわけではありません。
実際の残薬調整や算定要件を満たしているかどうかによって判断されます。
医師への疑義照会や、あらかじめ処方箋に記載された医師の指示などに基づいて対応します。
医師がその場で今回の処方日数を調整できることがあります。
薬が大量にある場合には、事前に薬局へ連絡してから持参すると確認しやすくなります。
飲み忘れた場合の対応は薬によって異なるため、処方時に医師・薬剤師へ確認しておきましょう。
まとめ|残薬は「隠すもの」ではなく、治療を見直す情報
2026年6月の診療報酬改定によって、従来の「重複投薬・相互作用等防止加算」は廃止され、残薬調整については「調剤時残薬調整加算」という新しい仕組みになりました。
一般的な区分では30点、一定の在宅患者やかかりつけ薬剤師による対応などでは50点となりますが、「薬が余っている」と伝えただけで自動的に料金が追加されるわけではありません。
大切なのは、残薬を「もったいない薬」としてだけ見るのではなく、飲み忘れ、副作用、生活リズム、処方日数、薬の多さなどを見直すきっかけとして活用することです。
残っている薬が分かっている場合は、まず診察時に医師へ伝えてください。
分からない場合や、自分では整理できない場合には、薬剤師へ遠慮なく相談しましょう。
「薬の名前・残っている数・残った理由」の3つをメモしておくだけでも、診察や薬局での相談がかなりスムーズになります。
薬剤師としてお伝えしたいこと
薬を飲めなかったことを責めるために、医師や薬剤師が残薬を確認しているわけではありません。
大切なのは、「その人の生活の中で無理なく治療を続けられるか」ということです。
1日3回の薬が生活に合わない。
薬の数が多すぎて管理できない。
飲むと胃がもたれる。
症状が良くなったので必要性に疑問を感じている。
こうした情報は、より良い治療方法を考えるための大切な材料になります。
「飲めていません」と正直に伝えることも、立派な医療情報の一つです。
一人で抱え込まず、医師・薬剤師と一緒に「続けやすい方法」を考えていきましょう。
なお、医療機関から処方されている薬の中止・変更については、必ず処方医または調剤を担当する薬剤師へご相談ください。
LINE無料漢方相談について見る
参考資料・公的情報
※診療報酬の算定可否や窓口負担額は、患者さんの状況、保険区分、薬局、処方内容などによって異なります。
※服用中の医薬品を自己判断で中止・増減せず、変更を希望する場合は処方医または薬剤師へご相談ください。



コメント