ひとの感覚は勘違いを起こします。
疾患の原因とは異なる場所が、痛くなることがあるのです。
これを『関連痛』や『放散痛』と呼んでいます。
具体的には、強い内臓痛が脊髄内で隣接する神経線維を刺激し、対応する皮膚分節に痛みが出現します。
原因となる部位から離れた部位に生じるものを、特に「放散痛」と呼びます。
有名なのが心筋梗塞による心臓の関連痛です。
心筋梗塞とは、心臓の筋肉に酸素や栄養を送る冠動脈が血栓などによって詰まってしまい心筋が壊死する病気です。
つまり、病気の原因は心臓であるのに左肩から左腕内側にかけて痛みを感じたり、顎や歯が痛いと感じることもあるのです。
これは、心臓からつながる痛みを脳に伝える神経と肩や腕、顎などからつながる痛みを感じる神経の一部が同じ神経に接続しているためなのです。
そのため、実際は心臓が痛みを発しているのに、別の部位が痛いと勘違いを起こしてしまうのです。
関連痛・放散痛の一例

- 心筋梗塞:胸の中央、左胸部、左肩、首、下顎、みぞおちなどの痛み
- 胆石発作:右肩の痛み
- 虫垂炎:初期は心窩部(みぞおち)から痛みが右下腹部に移動してくる
- 尿管結石、腎盂腎炎:腰の痛み
- 子宮内膜症、子宮・卵巣腫瘍:腰の痛み
関連痛の特徴

関連痛(Referred pain)とは、痛みが発生した部位とは異なる場所に感じられる痛みのことを指します。
つまり、痛みの原因がある場所とは別の場所で感じられる痛みです。
関連痛は、神経の経路や内臓器官の特性に関連して発生することがあります。
関連痛は、一般的には以下のような特徴があります。
- 指示された部位から遠く離れた場所に痛みが感じられることがあります。
例えば、心臓の痛みが左腕に放散する場合や、胆石の痛みが右肩に放散する場合などがあります。 - 痛みの性質や強さは、個人によって異なる場合があります。
同じ病態を持つ複数の人でも、関連痛が感じられる場所や感じ方が異なることがあります。
関連痛の発生メカニズムは、主に神経の経路や共有の神経給与領域に関係しています。
神経は、体内の情報を伝えるために特定の経路を通りますが、この経路が異常な刺激を受けることで関連痛が生じることがあります。
また、内臓器官は特定の神経とも密接につながっており、内臓の痛みが放散して他の部位に感じられることもあります。
関連痛は、医師が痛みの原因を正確に特定する上でのヒントとなる場合があります。
症状が明らかに関連痛の特徴を示している場合は、医師は関連する臓器や神経経路を調べるためにさらなる検査や評価を行うことがあります。
ただし、関連痛がある場合でも、必ずしもそれが深刻な病態を意味するわけではありません。
痛みが放散する原因を正確に特定し、適切な治療を行うためには、医師による評価と診断が必要です。
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