「耐性菌」は何故できてしまうの?【抗生物質・抗菌薬の正しい使用法】

「耐性菌」は何故できてしまうの?【抗生物質・抗菌薬の正しい使用法】
のんびり太郎
のんびり太郎

抗生物質をもらうときに、医師や薬剤師から「全部飲み切ってくださいね!」と説明されることが多いと思います。

それにはきちんとした理由があるのです。

今回は「耐性菌」について掘り下げて説明してみますね。

ハルくん
ハルくん

色々なお薬をもらうことがあるけど、「良くなったらやめていいいですよ」という説明の時と、「必ず全部飲み切ってくださいね」という説明の時があるけどどうしてなの?

のんびり太郎
のんびり太郎

それは、お薬を使用する目的によって、それぞれ説明が変わるのです。

例えば、抗生物質などは、きちんと飲み切らないといけないのですが、今回はその理由について解説してみますね!

抗生物質の中途半端な使用が危険なのはどうしてなの?

のんびり太郎
のんびり太郎

自分勝手に安易に抗生物質を飲んでいると、大変なことになるかもしれませんよ。

抗生物質を中途半端に飲むことで細菌が薬剤に対して耐性を獲得してしまいます!

適切な量・適切な期間にて抗生物質を使用すれば、薬がしっかりと効果を示すため、細菌を圧倒して全て退治する事が出来ます。

しかし、中途半端な量・中途半端な期間にて抗生物質を使用すると、細菌はトレーニングされ、薬剤に対して「耐性」を獲得してしまうことがあるのです。

細菌がその抗生物質に対して耐性を獲得するということは、その抗生物質は効かないということなのです。

中途半端な抗生剤の使用にて薬が効きにくい細菌だけが生き延びて、選別されてしまいます!

細菌も生物の一種のため、自然界でも様々な特徴を持つ多様な細菌が存在しています。

その中には、薬が少し効きにくいものや、増殖速度が速いもの、移動速度が速いものなど、様々な特徴の細菌が混在しています。

抗生物質を適切に投与することで細菌は死滅します。

しかし、抗生物質を中途半端に投与すると、薬が効きにくい特徴を持った細菌が生き残ることがあるのです。

そうなると、次はこの細菌がベースとなって増殖するため、全体的に薬が効きにくい菌集団ができあがってしまいます。

最後には、中途半端に抗生物質の使用を繰り返したために、薬の効かない完璧な「耐性菌」が完成することになります。

こうなってしまっては、いくら抗生物質を使用したところで、全く効かないので感染症に対する治療が困難になってしまいます。

出典:YouTubeチャンネル【AMR臨床リファレンスセンター】

「耐性菌」を生まないためには、薬の適切な使用が重要なのです!

薬の飲み方や量を勝手に変えてしまうこと、治療の途中で抗生物質を中断してしまうこと、長期間に渡って同じ抗生物質を使い続けることは、「耐性菌」を生む最大の要因になります。

医師は、こうした「耐性菌」が生まれないように用法・用量や服用期間を考慮して薬を処方します。

そのため、症状が治まっても抗生物質は処方された日数をきちんと飲み切り、自己判断で薬を途中で止めたり、前の薬が残っているからと中途半端に抗生物質を使ったりすることは、絶対に止めてください。

ハルくん
ハルくん

風邪をひいて病院を受診したのに、「ここの医者は抗生物質も出してくれない…」って言っている人は意外と多いよね。

のんびり太郎
のんびり太郎

そうだね。

抗生物質は何にでもすごく効くと間違って思い込んでいようなのです。
本当は抗生物質はそのお薬に対して感受性のある細菌にしか効果がないのですけどね…。

抗生物質の種類によって効果のある細菌と効果のない細菌が異なるのです。


また「風邪で病院へ行ったのに抗生物質を出してくれない」という病院に対する不満をよく耳にしますが、必要ない薬を使うことは避けるべきです。

「風邪」は、ほとんどが「ウイルス」によるものです。

「細菌」「ウイルス」は全くの別ものなので、「細菌」を退治する抗生物質では「ウイルス」には全く効きません。

そのため、通常は「風邪」に抗生物質は必要ありません

いつでも必ず抗生物質を出す病院・医師の方が???と言えます。

患者を満足させるために処方されるということもありますが、こうした安易な抗生物質の使用は「耐性菌」の原因にもなり、本来は誰のためにもなりません。

病気になったら薬をのまなければ治らないと思っている人も多いですが、基本的に人間には「自己治癒力」があり、薬を飲まなくてもゆっくり休めば治る病気も多く「必要ない抗菌薬の服用」は自分の中に耐性菌を育てるだけなのです。

さらに言えば、抗菌薬を用いることで、腸内細菌など体に有用な細菌まで殺してしまい免疫力を低下させ、余計に病気が長引くこともあり、本当に必要なとき以外は抗菌薬は飲まないほうがいいのです

出典:YouTubeチャンネル【AMR臨床リファレンスセンター】

抗生物質を服用してひどい下痢になった場合は、一旦中断することもあります!

抗生物質は、腸内の善玉菌も一緒に退治してしまうため、「下痢」や「便秘」などの副作用を起こすことがあります

多少の下痢であれば、「耐性菌」の観点からも我慢して薬を飲み続ける必要があります。

しかし、下痢に血や粘液が混ざっている場合や、脱水症状を起こしかねないほどのひどい症状の場合には、一旦薬の服用を中断し、主治医と対応を相談する必要があります。

こういった場合も、自己判断で中止や継続の判断はせず、必ず医師に相談するようにしてください。

薬を飲む・飲まないという決定は、治療に関することになるため、薬剤師が勝手に判断してはいけないのです。

その判断を下せるのは医師のみであるため、薬剤師は「その症状は副作用の可能性がありますね!」という助言・アドバイスしかできないのです。

「プラスミド」による細菌の耐性の伝播は、急速に拡大してしまいます!

細菌にはヒトと同じような染色体による遺伝子とは別に、もう一つの遺伝子「プラスミド」を持っています。

このプラスミドは、細菌同士で受け渡しが簡単にできる遺伝子であり、細菌の形質変化に大きく関わっています。

薬剤耐性に関する遺伝子が染色体上にある場合では、その細菌が子孫を残していくことで耐性が拡大していくのですが、それには、ある程度の条件が整わなければならず、すぐには拡がらないのです。

ところが、プラスミド上に耐性遺伝子があ場合、最悪の場合は他の細菌と接触するだけで耐性が伝播していき、急速に耐性化が進んでしまいます。

このような耐性の急速な拡大は非常に危険なため、各国が遺伝子データを蓄積して監視を続けているのです。

実際、最終兵器ともされる抗生物質であるコリスチンに対して、プラスミド上に耐性を持つ菌が発見され、その拡大が危惧されています。

また、様々な抗生物質に耐性を獲得した「多剤耐性菌」も次々と報告されています

のんびり太郎
のんびり太郎

近年、耐性菌による院内感染での死亡例も増加傾向にあり、抗生物質の乱用による弊害が問題になってきています。

正しい抗生物質の使用を徹底しましょうね!

薬が効かない細菌がこんなにも確認されています!【主な耐性菌一覧】

  • メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA):MRSA感染症は、治療が難しく死亡率の高い感染症のひとつです。

  • ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP):肺炎球菌はこどもや成人の肺炎や中耳炎、さらには髄膜炎など重症感染症の原因にもなります。

  • 基質拡張型ベータラクタマーゼ(ESBL)産生菌:ベータラクタム系抗菌薬を分解する酵素はベータラクタマーゼと呼ばれます。この酵素をもつ細菌が基質拡張型ベータラクタマーゼ(ESBL)産生菌です。

  • AmpC産生菌:AmpCもESBL同様、ベータラクタマーゼの一種で、この酵素は抗菌薬曝露により誘導されることが知られており、誘導されて過剰に発現するとペニシリン系から第3世代セフェム系まで広範な薬剤耐性を獲得します。

  • 多剤耐性緑膿菌(MDRP):緑膿菌は病原性そのものは弱いため、免疫が正常な人たちには感染症を起こしにくい細菌ですが、もともと薬が効きにくい細菌です。

  • カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE):耐性菌治療の切り札であったカルバペネム系薬に耐性を獲得した細菌です。
    「悪夢の耐性菌」と呼ばれ、現在世界で最も恐れられている耐性菌のひとつです。
のんびり太郎
のんびり太郎

ワクチンや抗菌剤などの開発によって、様々な感染症に対して対応することが出来るようになってきているのですが、薬剤の間違った使用法により耐性菌が生まれ、細菌・ウイルスとの「いたちごっこ」になっているのです。

ハルくん
ハルくん

耐性菌などについてわかりやすく解説してくれているサイトがこちらの【AMR臨床リファレンスセンター】です!

出典:National Center for Global Health and Medicine\

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