「風邪のひき始めには葛根湯」という言葉はよく知られています。
しかし、葛根湯の名前に入っている「葛根(かっこん)」が、そもそも何なのかをご存じでしょうか。
葛根は、日本でも身近な植物であるクズの根を基原とする生薬です。
一方、葛湯や葛餅に使われる「葛粉」は食品として利用されるでんぷんであり、漢方薬に用いる生薬の葛根とは扱いが異なります。
この記事では、薬剤師・中医薬膳師の視点から、葛根の特徴、中医学での考え方、葛粉との違い、そして代表的な漢方処方「葛根湯」について整理します。
- 葛根は、クズの根を用いる生薬です。
- 葛粉は、主にクズの根から取り出したでんぷんを食品として利用するものです。
- 葛根湯は、葛根だけではなく、麻黄・桂皮・芍薬・甘草・大棗・生姜などを組み合わせた漢方処方です。
- 葛根湯は「風邪なら何でも」という薬ではなく、一般に寒気があり、まだ汗をかいていない風邪の初期などが一つの目安になります。
- 日頃の養生では、葛だけに頼るのではなく、睡眠・消化吸収・水分・食事を一緒に整えることが大切です。
葛根(かっこん)とは?クズの根を使う生薬
葛根は、マメ科の多年草「クズ」の根を基原とする生薬です。
日本薬局方では、クズの周皮を除いた根として規定されています。
クズは日本各地でも見られる身近な植物ですが、漢方でいう「葛根」は、道端のクズをそのまま食べるという意味ではありません。
医薬品原料として品質管理された生薬として利用されます。
葛根には、プエラリン、ダイジン、ダイゼインなどのフラボノイド類が知られています。
ただし、特定の成分だけを切り取って「これを食べれば病気が治る」と考えるのではなく、生薬としての性質や漢方処方全体の組み合わせを見ることが大切です。
葛根・葛粉・葛根湯は何が違う?
漢方処方の構成生薬として用いられます。
葛湯、葛餅、とろみ付けなど食品として利用されます。
葛根そのものと葛根湯は同じではありません。
生薬としての「葛根」と、食品として親しまれている「葛粉」は区別して考えましょう。
葛根を自己判断で大量に煎じたり、食品感覚で利用したりするのではなく、生薬や漢方薬として使用する場合は専門家に相談するのがおすすめです。
中医学でみる葛根|「表」を開き、津液を助ける生薬
中医学では、生薬を単に「○○に効く成分」として見るのではなく、寒熱・五味・帰経・体質との関係から考えます。
| 五性 | 涼 |
|---|---|
| 五味 | 甘・辛 |
| 主な帰経 | 脾・胃 |
| 中医学的な特徴 | 解肌退熱、透疹、生津、升陽などの方向性で考えられます。 |
① 解肌退熱|体表にある邪気を外へ導く
解肌(げき)とは、体表の緊張をゆるめ、外から侵入した邪気を外へ追い出す方向に働きかける考え方です。
風邪のひき始めに、悪寒、発熱、首筋や背中のこわばりなどがある状態は、中医学では「表証」として捉えることがあります。
葛根は、このような体表に症状がある段階で用いられる代表的な生薬の一つです。
② 生津|からだの潤いを生み出す
津液(しんえき)とは、中医学でいう身体を潤す水分の総称です。
葛根には「生津」と呼ばれる、津液を生み出す方向性があると考えられています。
発熱や発汗などで水分を消耗すると、口の渇きや身体の乾燥を感じることがあります。
中医学では、邪気を追い出すだけでなく、消耗した津液をどう守るかも重要な視点です。
③ 脾・胃に関わる|「土」を整える視点
葛根の帰経として挙げられる「脾・胃」は、中医学では食べたものを気・血・津液へ変えていく土台です。
ほどよい堂では、胃腸を「脾=土」と捉え、土が整うことで、全身へ栄養や水分を届けやすくなるという視点を大切にしています。
体調を崩したときほど、栄養価だけを追いかけるのではなく、「今の胃腸で消化・吸収できるか」を考えることがポイントです。
中医学的にまとめると
葛根は、身体の表面にある邪気へ働きかけながら、脾胃や津液にも関係する生薬として捉えられます。
ただし、実際の漢方治療では葛根単独ではなく、症状や「証」に合わせて他の生薬と組み合わせます。
「葛根」と「葛根湯」は同じではありません
葛根について調べている方の多くが、同時に気になっているのが「葛根湯」ではないでしょうか。
葛根湯は葛根だけでできているわけではありません。
一般的な葛根湯は、次の7つの生薬から構成されます。
| 生薬 | 漢方的にみた主な役割のイメージ |
|---|---|
| 葛根 | 体表の緊張、首・肩のこわばりなどを考える際の中心生薬。 |
| 麻黄 | 発汗を促し、表にある寒邪を外へ導く方向。 |
| 桂皮 | 身体を温め、表を開く方向。 |
| 芍薬 | 筋肉の緊張や陰血を守る方向。 |
| 大棗 | 脾胃を支え、処方全体を調和させる方向。 |
| 甘草 | 諸薬を調和し、急迫した状態を和らげる方向。 |
| 生姜 | 胃を温めながら、表を開く働きを支える方向。 |
漢方は、ひとつの生薬の作用を足し算するだけではありません。
複数の生薬を組み合わせることで、「どの方向へ身体を動かすか」という処方全体の性格が作られます。
葛根湯が向きやすいのはどんな風邪?
葛根湯は「風邪をひいたらとりあえず飲む薬」ではありません。
漢方では、同じ風邪でも寒気・発汗・のど・鼻・体力・経過などを見て使い分けます。
JPS製薬の葛根湯では、体力中等度以上で、汗をかいていない感冒の初期、鼻かぜ、鼻炎、頭痛、肩こり、筋肉痛などが効能・効果として示されています。
中医学では「表寒・実証寄り」のイメージ
表寒(ひょうかん)とは、身体の表面に寒邪が入り、ゾクゾクとした寒気などが現れているタイプです。
実証(じっしょう)とは、邪気に対抗する体力が比較的残っている状態を表します。
葛根湯では特に、「寒気がする」「まだ汗をあまりかいていない」「首や肩がこわばる」といった組み合わせが処方を考えるポイントになります。
- □風邪のひき始めである。
- □ゾクゾクするような寒気がある。
- □まだ汗をあまりかいていない。
- □首筋や肩がこわばる。
- □頭痛や筋肉痛を伴う。
- □極端に体力が落ちている状態ではない。
※これは自己診断のための診断基準ではなく、漢方的な処方選択を理解するための目安です。
葛根湯は、飲むタイミングと症状のタイプが大切な漢方薬です。
ほどよい堂ではJPS製薬の取扱商品について、購入手続き・相談方法をご案内しています。
こんなときは「とりあえず葛根湯」にしない
葛根湯は有名な処方ですが、すべての風邪に適しているわけではありません。
すでに汗がたくさん出ている、のどの強い痛みや熱感が中心、症状が何日も続いている、著しく体力が低下しているなどの場合は、葛根湯の典型的なパターンとは異なる可能性があります。
また、高熱、強い倦怠感、息苦しさ、意識状態の変化、脱水が疑われる状態などがある場合は、漢方薬だけで様子を見続けず医療機関への相談を検討してください。
葛根湯には麻黄や甘草などの生薬が含まれています。
持病がある方、妊娠・授乳中の方、他の漢方薬や医薬品を使用している方、高齢者、小児などは、製品の使用上の注意を確認し、必要に応じて医師・薬剤師・登録販売者へ相談してください。
特に複数の漢方薬を併用すると、甘草や麻黄など同じ生薬が重複することがあります。
「漢方だから何種類一緒に飲んでも大丈夫」とは限りません。
食品として楽しむなら「葛粉」|葛湯はやさしい食養生
漢方薬として使う葛根とは別に、日本では葛から採ったでんぷんを「葛粉」として昔から食生活に取り入れてきました。
水に溶かした葛粉を加熱すると、とろみがつきます。
葛湯、あんかけ、スープ、お粥などに使いやすく、体調を崩して食欲が落ちているときにも取り入れやすい調理法です。
おすすめは「葛+温かい汁物」
胃腸が疲れているときは、葛粉を使った温かいスープや味噌汁など、消化への負担を抑えた食事を選ぶのも一つです。
ほどよい堂では、普段から味噌汁や野菜スープを「毎日の定番」にすることをおすすめしています。
野菜、海藻、きのこ、豆類などを組み合わせれば、食物繊維やミネラルなども一緒に取り入れやすくなります。
元気なときには一口30回程度を目安によく噛むことも、消化のスイッチを入れ、「脾=土」を助ける基本的な養生になります。
生姜を合わせるときは体調を見ながら
葛湯には生姜を加える食べ方もよく知られています。
冷えを感じるときには温かい葛湯として取り入れやすい一方、強いほてりや口渇があるときなどは、刺激の強いものを無理に加える必要はありません。
「身体に良い食材だから毎回同じ食べ方」ではなく、その日の寒熱や胃腸の状態に合わせるのが薬膳の基本です。
風邪のときほど大切な「栄養・循環・吸収」の3本柱
漢方薬を選ぶことも大切ですが、身体が回復するための土台は日々の生活にあります。
ほどよい堂では、養生を「栄養」「循環」「吸収=腸活」の3本柱で考えています。
細胞は、食べたものを材料として日々入れ替わっています。
食欲が落ちているときは無理に大量に食べず、卵、豆腐、魚、味噌汁、野菜スープなど、その時に食べやすいものから少しずつ補います。
血液は栄養と酸素を身体の各所へ届けます。
風邪の最中に無理な運動をする必要はありませんが、回復後は散歩や軽いストレッチなどで、無理なく身体を動かす習慣を戻していきましょう。
食べることと、消化・吸収できることは同じではありません。
発酵食品、発酵性食物繊維、海藻、きのこ、豆類などを日常的に取り入れ、プロバイオティクス・プレバイオティクス・バイオジェニックスの三方向から腸内環境を支える考え方もあります。
3日・3週間・3か月で考える体調管理
体調は、一度の食事や一包の漢方薬だけで作られているわけではありません。
身体は常に入れ替わっている「動的平衡」の中にあります。
まず3日|休養を最優先する
風邪など急な体調変化では、まず睡眠、水分、消化しやすい食事を優先します。
仕事や家事を無理に続けるより、早めに休むことも立派な養生です。
3週間|生活リズムを戻す
回復後は、食事時間、睡眠、排便、運動などを少しずつ整えます。
味噌汁や野菜スープなど、「考えなくても続けられる定番」を一つ作ることがおすすめです。
3か月|体調を崩しにくい土台をつくる
疲れやすい、冷えやすい、胃腸が弱いなどを繰り返す場合は、風邪だけを見るのではなく普段の体質も振り返ってみましょう。
中医学では、気虚、血虚、陽虚、陰虚、気滞、瘀血、痰湿、湿熱など、身体の偏りによって養生法が変わります。
「いつも同じ薬を飲む」より、自分の体質を知ることで日常の選択肢を整理しやすくなります。
ほどよい堂オンラインショップでは、体質別薬膳茶、オーダーメイド薬膳茶、生薬・薬膳素材、腸活アイテムなどを取り扱っています。
「何を選べばよいかわからない」という場合は、商品を先に決めるのではなく、まず今の体質から整理するのがおすすめです。
葛根についてよくある質問
同じではありません。
葛根は一つの生薬で、葛根湯は葛根・麻黄・桂皮・芍薬・甘草・大棗・生姜などを組み合わせた漢方処方です。
原料となる植物は同じクズですが、利用方法が異なります。
葛粉は主にでんぷんを食品として利用するもので、生薬の葛根とは区別して考えます。
風邪の初期でも症状によって処方は異なります。
葛根湯は一般に、寒気があり、まだ汗をあまりかいていない、首や肩のこわばりを伴うなどの状態が一つの目安です。
「風邪=葛根湯」と決めつけず、製品の効能・効果を確認してください。
葛根湯製品には肩こりを効能・効果に含むものがあります。
ただし肩こりにはさまざまな原因があり、中医学でも気滞、瘀血、血虚、寒湿など複数のタイプを考えるため、慢性的な肩こりを葛根湯だけで対応するとは限りません。
製品によって用法・用量が異なります。
顆粒、錠剤、液剤など、手元の商品パッケージや添付文書に記載された服用時間と量を必ず確認してください。
自己判断での併用はおすすめしません。
葛根湯には麻黄や甘草などが含まれているため、他の漢方薬と成分が重複する可能性があります。
複数の医薬品を使用している場合は、医師・薬剤師・登録販売者へ確認してください。
まとめ|葛根は「葛根湯の名前の一部」だけではない
葛根は、日本でも身近なクズの根を利用する伝統的な生薬です。
中医学では、体表にある邪気への働き、津液、脾胃などとの関係から考えられ、葛根湯をはじめとするさまざまな漢方処方に用いられてきました。
一方、普段の食卓で使う葛粉は食品として楽しむものであり、生薬の葛根とは区別する必要があります。
そして葛根湯も、「風邪なら何でも飲めばよい」処方ではありません。
寒気、発汗の有無、体力、首肩のこわばりなどを確認し、自分の状態に合っているかを見ることが大切です。
漢方薬を上手に使いながら、栄養・循環・吸収=腸活という日々の土台も一緒に整えていきましょう。
葛根湯などのJPS製薬取扱商品を確認したい方は、購入案内ページをご覧ください。
薬膳茶や日常の養生アイテムを探したい方は、ほどよい堂オンラインショップからご覧いただけます。
参考情報
・国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「薬用植物総合情報データベース・カッコン」
薬用植物総合情報データベース
・ジェーピーエス製薬株式会社「葛根湯」
JPS製薬 葛根湯 製品情報
・厚生労働省「日本薬局方」
日本薬局方について
※この記事は漢方・薬膳に関する一般的な情報提供を目的としています。
病気の診断や治療を目的とするものではありません。
医薬品を使用する場合は、商品の添付文書・使用上の注意を確認し、必要に応じて医師・薬剤師・登録販売者へご相談ください。



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