調剤薬局でお薬をもらうときに「ジェネリック医薬品にしませんか?」と勧められたり、健保組合・協会けんぽや国民健康保険などから「ジェネリック医薬品に変えるとこのくらい安くなります」という通知が来ることが多くなったと思います。

なぜ、
こんなに「ジェネリック医薬品」に変えるように促されるのか
深掘りしてみますね!

「ジェネリック医薬品」に変更するように促される理由とは?

調剤薬局に行くと、
何度も「ジェネリック(後発医薬品)に変えませんか?」って
よく言われるんだけど…。

「ジェネリック医薬品」に変更するように促される理由には、
次のように大きく分けると2つの側面があります。
- 国としては、漸増し続けている医療費を抑制するため
- ジェネリック医薬品に変更することで調剤薬局の収入アップにつながるから
ジェネリック医薬品変更を促される理由その①【国が漸増している医療費を抑制するため】


近年、日本の医療費が爆増中であると報道されていますね。
国民医療費も30兆円を超え、
2014(平成26)年には42兆円を超えたようなんです。

毎年、
増加していっている国民医療費を少しでも抑制したいという国の施策のひとつが、
ジェネリック医薬品推進なのです。

医療費全体における医薬品の割合は無視できるものではないのです。
ちなみに、国民医療費の約5分の1(8兆円以上)を医薬品が占めています。

国民医療費の約3分の1を後期高齢者医療給付分が占めていて、
この部分の伸びは、医療費抑制という日本の医療政策における課題を現しています。
これから日本はさらに超高齢化社会に突入するため、
国の財政に大きな負担を及ぼす医療費の抑制に躍起になっているのですね。

この問題は「国民皆保険制度」を維持していくうえでも重要な問題だよね!

ジェネリック医薬品変更を促される理由その②【ジェネリックに変更すると調剤薬局の収入アップにつながるから】


調剤薬局では『後発医薬品調剤体制加算』といって、
後発医薬品を使用した割合によって調剤薬局に入ってくる収入が変わる制度があるのです。
後発医薬品の割合が多いほど加算(お金)というご褒美が与えられる制度になっています。
そのため、調剤薬局は収入アップのためになるべく後発医薬品に変更しようとするのです。

そんな仕組みだったんだね!

『後発医薬品調剤体制加算』は、細かい規定があって今回は詳細は省略するけど後発医薬品の割合によって調剤薬局ごとに決まっていて、「処方箋1枚につき150円~280円」が調剤薬局の収入アップにつながります。

1日100人分の処方箋を受ければ、
『後発医薬品調剤体制加算』 だけで数万円の収益になるから大きいよね!

そうなんです!
国はそうやって調剤薬局に報酬を与えることで、
後発医薬品の使用促進を促すような制度を制定しているのです。
後発医薬品使用を促進させようとする制度が病院・診療所に対しても設けられている⁉

ところで、
医師が処方せんを発行することで、
病院に報酬(手数料のようなもの)が与えられるのは知っていましたか?
※基本的には処方箋料は1回680円です。

医師が発行する処方せん料には、いくつかの加算があります。
その1つが『一般名処方加算』です。
これは、後発医薬品がある医薬品について、
お薬の商品名に代えて有効成分の名前で処方した場合に算定されます。
※ 一般名処方加算は、50円~70円です。
※処方箋に書いてあるお薬の名前の前に【般】と書いているときは、『一般名処方加算』が加算されていると思ってください。


【般】の意味は、わかりやすく言えば、
医師から調剤薬局の薬剤師に向けたメッセージで、
「このお薬はジェネリック医薬品に変更してもいいですよ」っていうことなんだよ。
病院で処方せんをもらって調剤薬局でお薬をもらう『医薬分業』はなぜ始まったの?


最近は多くの病院・クリニックが、
調剤薬局でお薬をもらうための「処方せん」を発行しているよね!
でも、昔は病院の中でお薬をもらう方が多かったようね気がする…。

これには、ちょっとした理由があって…。
この仕組みは「医薬分業」と呼ばれて、病院や診療所内で直接お薬をもらうのでなく、
調剤薬局で処方された薬をもらうように医療政策で誘導した結果なんです。

なぜ、わざわざ病院・クリニックと薬局を切り離して薬をもらわなければいけなくなったの?
患者さんにしてみれば面倒だよね…。

これには、次のような大きく2つの理由があるんです。
- 一部の医師が儲け優先のために過剰なお薬を出すようになったため
- 薬剤師が必ずお薬に関与することで、医療事故などのリスクを回避するため
一部の医師が儲け優先のために過剰なお薬を出す「薬漬け医療」が問題に! 【薬価差益】


まず、最初に説明しておかなければならないことに『薬価』があります。
薬価とは、医療用医薬品(医師が処方する医薬品)の公定価格のことです。
公的な医療保険が適用される医薬品の価格は、すべて国(厚生労働大臣)が決めています。
病院や診療所で使われる薬の価格は、製薬会社が自由に決めているわけではありません。

つまり、
全国どの医療機関でも価格は一律ということになります。

『薬価差益』とは何か?ということになりますが、医療用医薬品を薬局や病院が購入する際は、基本的に卸し会社を経由します。
その際の『卸価格』と公的価格である『薬価』との金額の差を『薬価差益』といいます。
以前は、この薬価差益がかなり大きかったのです。

ちなみに、1989年(平成元年)では衆議院決算委員会において、
薬価差益が1兆3000億円(当時の薬剤費全体の25%)にも及ぶことが問題になっていました。

以前は、お薬を出せば出すほど医療機関は儲かる仕組みだったのです。
そのため、儲け第一主義の医師による「薬漬け医療」と揶揄されていたのです。

以前は必要のないお薬が次から次に処方されていたようなことも…。

このようなことから、病院と薬局を切り離す『医薬分業』を行うことで、一部の利益主義医師による「薬漬け医療」を回避し、医療費の抑制を図ったという歴史があります。
どんなにお薬を処方しても、処方箋料という一定の収益にしかならなくなったということですね。
ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは?【昔は、皮肉っぽく『ゾロ品・ゾロ薬』とも呼ばれていました】

ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは、先発医薬品と同一の有効成分を同一量含み、同一経路から投与する製剤で、効能・効果、用法・用量が、原則的に同一であり、先発医薬品と同等の臨床効果・作用が得られる医薬品をいいます。

ジェネリック医薬品は、
「後発薬」「GE薬」といった略称で呼ばれることもあります。
先発品の特許切れの後にゾロゾロたくさん出てくる様子から、
「ゾロ薬」「ゾロ品」と皮肉っぽく呼ばれることもありましたね。

ジェネリック医薬品は、
”先発医薬品と完全に一緒”
というわけでは無いって本当⁉

製造しているメーカーによって、お薬を構成している添加剤が異なります。
正確には全く同じお薬ではないのです。
治療効果は、きちんと厚生労働省によって担保されているので安心してくださいね!
医薬品の添加剤とはどんなもの?
添加剤とは、製剤に含まれる有効成分以外の物質です。
製剤化を容易にする、品質の安定化を図る、有用性を高めるなどの目的で、ほとんどすべての医薬品に添加されています。
用途により、賦形剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、矯味剤、懸濁化剤、乳化剤、着香剤、溶解補助剤、着色剤、粘稠剤などと呼ばれています。
オーソライズドジェネリック(AG)とは
オーソライズドジェネリックとは、添加剤を含め『全てが同一なジェネリック医薬品』のことを指します。
要するに、有効成分、原薬、添加剤、製法が同一です。
場合によっては、先発医薬品と同一の系列会社(子会社)によって、先発品と同じ工場や生産ラインで製造され、オーソライズド・ジェネリック(AG)として、他の後発品に先駆けて発売されています。

先発医薬品と同一の系列会社(子会社)がAGを発売している場合は、お薬の製造過程において最後に「識別コード(数字やアルファベット)と商品のパッケージをかえている」だけというパターンが多いようです。


オーソライズドジェネリック医薬品は、先発医薬品メーカーがジェネリックメーカーに特許実施の許諾を与えて開発しており、他のジェネリック医薬品に先駆けて発売が可能なのです。
先発医薬品の特許が切れる半年前から、独占販売が認められているのも特徴です。

なぜ、系列会社(子会社)は、販売単価が安くて利益の少ないオーソライズドジェネリックを販売するの?

いい質問だね!
確かに先発品を売った方が、利益が高いからよさそうだよね!
でも国の方針が…。

医療費削減が喫緊の課題である日本の高齢化社会において、国としては「安いジェネリック医薬品を積極的に使用してもらいたい」という考え方なんです。
それで、国は病院や薬局に対して、ジェネリック医薬品に変更したら、その対価として報酬(お金)を与えるような仕組みにしているのです。
つまり、「ジェネリックを推奨した方が儲かりますよ!」ってことですね。

医療業界ではジェネリック医薬品推進には抗えないような流れが出来てしまっているんだね。

先発品メーカーはお薬の特許が切れたら、
もう先発品から後発品に変更されてしまうことは仕方がないと諦めているんだね。

先発品のメーカーとしては利益率は低くなるけど、医薬品の特許が切れる半年前に発売できる「オーソライズドジェネリック」を子会社に作らせることで、他の後発品メーカーにシェアを奪われてしまわないように対応しているのです。

AGについては分かってきたけど、
実際のところ患者さんはジェネリック医薬品に変更するのを嫌がらないの?

そこが問題なのですが、
ジェネリック医薬品を嫌がる患者さんも多いのです…。

そんなとき、どうするの?

そんなとき、大活躍するのが「オーソライズドジェネリック」なんですね!
そもそも中身は同じで販売名とパッケージを変えているだけなので、
「全く同じ薬で、安くなるだけです」
と説明できるから患者さんの理解が得られやすいのです。

そう言う理由で、
調剤薬局はオーソライズドジェネリックを積極的に採用することが多いですね。
自分が飲んでいるお薬が「オーソライズドジェネリック」か調べる方法とは?

自分が飲んでいる薬が、オーソライズドジェネリックかどうか確認したい場合は『オーソライズドジェネリック一覧』というキーワードで検索していただくと、最新の情報が入手できると思います。

どうしてもジェネリック医薬品(GE)変更に抵抗感があるひとに薬剤師からのアドバイス!
ジェネリック医薬品は品質が悪いからと変更拒否される方がおられますが、その場合はオーソライズドジェネリックに変更することをお勧めします。

オーソライズドジェネリックは、
名前(『有効成分の一般的名称(成分名)+剤形+含量+「会社名(屋号等)」』)と識別コード・パッケージが変わるだけです!

オーソライズドジェネリックに変更するときのデメリットはないのかな?

強いて言えば、薬の名前が変わるので馴染み感がなくなるくらいですね。
これはすぐに慣れてくると思います。

逆にメリットは大きくて、「薬価(お薬そのものの価格)は先発医薬品の50%くらい(半額程度)」が相場で、支払いがかなり安くなります。
ただし、調剤薬局での支払額は、いろいろな手数料のようなものも含まれていることと、自己負担額は保険適用により1~3割負担なので、今まで支払っていた金額が半分になるわけではないので注意してください。

すべてのお薬にオーソライズドジェネリックが発売されているわけでは無いんだって!
その点は処方箋を調剤薬局で受付するときに確認しておくと良さそうだね!
ジェネリック医薬品(GE)に変更する際のデメリットとは【ジェネリック医薬品変更時の注意点】
先発医薬品からジェネリック医薬品に変更する際は、オーソライズドジェネリック以外の場合を除いてお薬の添加剤の内容が異なります。
患者さんの体質によっては、添加剤の変更が原因でアレルギー反応など副作用等を引き起こすことがまれにあります。

ポイントは添加剤が原因で起きるアレルギーは、先発医薬品であってもジェネリック医薬品であっても、同様に起こりうることです。
仮に副作用が出た場合でもジェネリック医薬品の添加剤が粗悪なものになったからというわけでは無く、その使用されている添加剤が、そのひとの体質的に合わなかったということなのです。

先発医薬品の添加剤の方が高品質で、
副作用が出にくいというわけではありません。
まとめ

- 後発医薬品に変更すると、基本的には患者さんも同じ効果のお薬が安く手に入れられるため金銭的にメリットあり!
- 調剤薬局・病院・診療所などの収入アップになり、医療機関の経営に下支えになって医療機関もメリットあり!
ただ、大手の新薬医薬品を開発している製薬メーカーは特許が切れると後発医薬品推進の波にのまれて大幅に売上ダウンとなります。
この状態が行き過ぎると製薬メーカーは新薬開発に対する費用を捻出できなくなるために新薬の開発が遅れる可能性も懸念されます。

そうなると、
日本の医療の進歩は海外に比べて大きな後れを取ってしまうことになるかもしれません…。

この場合はちょっと違うかもしれないけど、世の中「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの「良し」の「三方良し※」の実現はなかなか難しいのかもしれないね…。
(※ 売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であるということ。 近江商人の心得をいったもの)


「宮崎県川南町」に位置する「ほどよい堂」において、「薬剤師×中医薬膳師×ペットフーディスト」として、健康相談を行っています。
代表の河邊甲介は、漢方医学、薬膳、そして腸活を組み合わせた独自のアプローチで、個々の健康に寄り添います。
漢方相談や薬膳に関するオンライン相談も提供し、遠方の方々も利用できます。
また、わんこの健康も見逃しません。
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