もっとも有名な漢方薬の一つで、風邪の初期や肩こりに使用される漢方薬が『葛根湯(かっこんとう)』です。

風邪といったら『葛根湯』ってイメージだもんね!

寒気が出てきて、まだ汗が出ていないときが、葛根湯を服用するベストなタイミングです。後頭部から首筋にかけて凝りがある時も、葛根湯を使う目安になります。
ただ、胃腸が弱い人が服用するとムカムカしたりすることがあります。風邪に用いられる漢方薬は、体質別に選択した方がいいと言われています。
風邪によく使用される漢方薬には、『麻黄湯・葛根湯・桂枝湯・麻黄附子細辛湯・香蘇散』などがあり、体質などを考慮しながら使い分けます。

『葛根湯』に「独活(ドクカツ)」と「地黄(ジオウ)」を加えた漢方薬で『独活葛根湯』という方剤もあります。
この方剤は、関節や筋肉の冷えなどによる痛みを鎮める「独活(ドクカツ)」と、血流を改善する作用のある「地黄(ジオウ)」の働きにより、四十肩、五十肩など急性の肩の痛みやこわばりを改善する作用があります。
『独活葛根湯』は小林製薬からは「シジラック®」、ロート製薬からは「ガチラック®」、日本臓器製薬からは「肩用ラックル顆粒®」という商品名で販売されています。
風邪とはどのような状態なの?
主にウイルスが原因で起こる「鼻・のどの急性の感染症」が、一般的には『風邪』と呼ばれています。風邪の原因は、ほとんどがウイルスです。
風邪の原因である「ウイルス」に対して、「抗生物質」は全く効果がありません。抗生物質が効果があるのは「細菌」であり、「ウイルス」と「細菌」は全く別のものなのです。
「抗生物質を飲めば風邪が早く治る!」という確かなデータは世界中どこにもありません。
現在では、抗生物質の乱用による「薬剤耐性菌」の出現が世界的な問題になっています。

小児科の処方箋を受ける調剤薬局あるあるなんですが、
「せっかく病院に来たのに、あそこの小児科では抗生剤も出してくれない・・😠」って保護者の方は多いんです・・・。

薬剤耐性菌とはどのような細菌なの?

「薬剤耐性菌」とは、抗菌薬が効かない薬剤耐性(AMR=Antimicrobial Resistance)を持つ細菌のことです。
- 1つは必要のない症例での抗菌薬の投与
- 2つめは必要以上の広域抗菌薬の投与
- 3つめは必要以上の抗菌薬の長期投与

現在の新薬開発において、次々と現れる薬剤耐性菌に対し、抗菌薬の開発が追いつかなくなってきています。これはかなり危険な状態です。
【葛根湯】の生薬構成
葛根(カッコン)、大棗(タイソウ)、麻黄(マオウ)、甘草(カンゾウ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、生姜(ショウキョウ)
【葛根湯】の効能効果
風邪の引き始め、鼻かぜ、炎症性疾患、肩こり、上半身の神経痛、じんましん
#上から実証(体が丈夫)⇒中間⇒虚証(虚弱体質)の順で使用される漢方薬になります。
【葛根湯】の特徴・説明
- 麻黄剤の一種で『桂枝湯』に「麻黄」・「葛根」を加えたものです。桂枝湯は消化器が弱いひとのかぜの初期に使用することが多い漢方薬です。
「麻黄」は、エフェドリンを含み交感神経を興奮させる作用があります。また、鎮咳・気管支筋の弛緩・抗炎症・抗アレルギー作用などがあります。
- 女性の場合は「乳腺炎」に使用することもあります。
- 味は表現法が難しいですが、辛いです。
- 葛根湯は、風邪のひきはじめに飲むことによって、熱産生をより高め、免疫力を高める作用があります。

風邪を引いて体温が上がる(発熱)のは、体内の免疫力を高め、早くウイルス・細菌を排除しようとする体のはたらきによるものです。 安易な解熱剤の服用は、逆効果になる場合もあります。

【葛根湯】のクリニカルパール
クリニカルパール(Clinical pearl)とは、経験豊富な臨床医から得られる格言のようなものです。

耳管開放症と耳管閉鎖症などのように耳の空気の通りが上手にできない場合は『葛根湯』が良い場合があります。
耳鼻咽喉科の医師は中耳炎に『葛根湯』を使われることも多いようです。
(引用:漢方.jp)

『葛根湯』は上焦(じょうしょう)と呼ばれている頭から横隔膜までの部位の痛みを改善する働きが期待できます。
(引用:漢方.jp)

悪寒時には発熱せず、発熱時には悪寒せず、悪寒と発熱が規則的あるいは不規則に交代して出現する状況を ”往来寒熱” というのですが、このように風邪をこじらせた場合には『葛根湯』に『小柴胡湯(加桔梗石膏)』を合わせた『柴葛解肌湯 (さいかつげきとう)』がおすすめです!


破傷風には『葛根湯』と『芍薬甘草湯』を併用することがあります。
これまで、破傷風3例に漢方治療を併用してきましたが、全例、筋弛緩薬を使用することなく症状を改善させることができました。
漢方薬の使うコツですが、初回は芍薬甘草湯3包(7.5g)と葛根湯3包(7.5g)を一度に投与します。
その後は、通常量を投与します。『3包療法』と名付けていますが、症状が改善すれば投与は終了するので、短期間では副作用の心配はありません。
※牙関緊急や後弓反張などの症状に対して、経鼻胃管から投与します。または、注腸で投与することもできます。
(引用:第24回日本脳神経外科漢方医学会 学術集会)

『葛根湯』に ”生ショウガのしぼり汁” を数滴入れて服用すると効果が高まることがあります。
(引用:漢方.jp)
【葛根湯】の注意点
むくみ・体重増加・血圧上昇などが現れた場合は医師・薬剤師に相談するようにしてください。
【葛根湯】の入手方法
- 病院で処方してもらう
- ドラッグストアや楽天・Amazonなどのインターネットで購入できます。

『葛根湯』は多くの製薬メーカーから様々なタイプ(顆粒・液剤など)の商品が販売されていますが、有名な商品のひとつに第一三共ヘルスケアの「カコナール®」があります。
「カコナール®」は1日3回服用で、「カコナール2®」は一日2回服用と飲み方の違いになります。
「カコナール2 はちみつジンジャーフレーバー®」は苦みを抑えたはちみつジンジャーフレーバーで、のみやすくなっています。
漢方薬のメーカーは「ツムラ」「クラシエ」が2大メーカーです。そのほか、「三和」「コタロー」などあります。どこのメーカーが優れているかは自分は正直わかりません。
同じ方剤名でもその中に含まれる生薬は植物などが原料になっているので、生産地・生産時期・天候などで変わります。ただ、しっかりと厳しい基準をクリアしたものですので心配はありません。
ちなみに、「ツムラ」さんの粉末は、粒子が大きいですがお湯に溶かすときれいに完全に溶けてしまいます。
「クラシエ」さんの粉末は、粒子が細かいですが、お湯に完全には溶けず、粒子が沈殿した感じになります。
実際に飲み比べて、お好みのメーカーを選んでいただければ良いと思います。
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