睡眠剤や安定剤には様々な副作用があらわれます。
今回は、漫然と長期的に睡眠剤・安定剤を使用することで起きてしまう副作用について解説してみますね!
睡眠剤・安定剤による「持ち越し効果」とはどのような状態なの?
睡眠作用が翌日にも残ってしまい、日中の眠気やふらつき、頭痛、めまいなどの症状が出ることです。
作用時間の長い睡眠薬を服用したときによく見られる副作用です。
また、高齢になると薬の代謝に時間がかかるようになり、持ち越し効果が起きやすくなります。
睡眠剤・安定剤による「記憶障害・認知機能障害」とはどのような状態なの?
薬を飲んでから眠るまでの出来事や、夜中に目が覚めたときの出来事などを忘れてしまうことです。
超短時間作用型の睡眠薬を使ったときに発生しやすいという調査結果があります。
睡眠剤・安定剤による「筋弛緩作用」とはどのような状態なの?
筋肉に力が入りにくくなることです。ふらつきや転倒の原因になります。
作用時間の長い睡眠薬は、明け方まで薬の作用が残りがちなので、筋弛緩によるふらつき・転倒には注意が必要です。
高齢者が転倒すると10回につき1回の割合で骨折をしてしまい、その後の生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。
特に太ももの骨の付け根部分(大腿骨近位部)の骨折は深刻で、10%以上は寝たきりになります。
睡眠薬と聞くと、眠気が強くもうろうとして転ぶ様子を思い浮かべるかもしれませんが、そのようなケースはほとんどありません。
多くの場合は、早朝に目が覚めてトイレに行く頃には眠気はかなりさめてしまっています。
そのため、むしろ睡眠薬による眠気が切れかけた頃に目が覚めてトイレに向かっている途中で転ぶことが最も多いのです。
睡眠薬の作用時間は過ぎているのになぜ転んでしまうの?
それは眠気が消えた後も、筋肉を弛緩させる作用や体の平衡機能を抑制する作用は続いているためなのです。
つまり、「睡眠薬の効果が長い・短い」とは「催眠作用の持続時間」のことであり、その他の作用の持続時間とは同じではありません。
そのため、眠気がなくなっても、筋肉は弛緩しているために、よろめいた時に踏ん張りがきかない、つま先が上がらず段差に引っかかりやすいなど、転倒しやすい症状が出てしまうのです。
「睡眠薬の効果が切れた」と油断してはいけないのです。
自分はふらふらしたことは無いから大丈夫と言っている人ほど、自覚していない分、転倒して骨折などの大けがをする危険が高いのです。
睡眠剤・安定剤による「反跳性不眠」とはどのような状態なの?
それまで使っていた睡眠薬を突然中止したときに起こる現象で、睡眠薬を服用しはじめた頃よりも強い不眠に襲われます。
睡眠薬をやめられなくなる原因の一つです。作用時間が短い睡眠薬をやめたときほど起こりやすいです。
睡眠薬を長期服用している場合は、少しずつ服用量を減らしていくことが大切です。
睡眠剤・安定剤による「奇異反応」とはどのような状態なの?
睡眠薬の服用によって不安や緊張が高まったり、攻撃的な行動をとったりすることです。
多量の睡眠薬を用いたときや、睡眠薬とアルコールを併用したときに発生しやすくなります。
睡眠薬・安定剤とアルコールの相性とはどのようなものなの?
睡眠薬とアルコールを一緒に摂ると、作用が増強したり、思いがけない副作用が出る危険性があります。
たとえば、「夢遊病」のような症状が発生することも知られています。
「8時間睡眠」の根拠は?
「8時間寝ないと体に悪い」という8時間神話には科学的根拠は示されていません。
高齢になるにつれて実睡眠時間は短縮し60歳以上では6時間程度であることが示されています。ただし、個人差はあります。
基本的に睡眠剤を使用しなければならない場合は、不眠が原因でうつ病などの精神異常をきたしたり、身体異常をきたしている場合です。
例えば、トイレで目が覚める場合は、まずはトイレに起きる原因を改善させる必要があるでしょう。
睡眠剤・安定剤による「薬物依存」とはどのような状態なの?
睡眠剤・安定剤には依存性があります。
夜になると何となく服用したくなる。薬の在庫がないと落ち着かなくなる。飲まないと何となく悪くなりそうな気分になるなど・・・は、すでに依存状態になっている可能性があります。
睡眠剤・安定剤の投与日数制限とはどのようなものなの?
睡眠剤・安定剤は乱用防止・悪用防止などの様々な理由により処方日数制限が設けられている薬剤です。
最長でも30日までしか処方できません。これは、厳しく法規制されています。
本来なら、高血圧の薬など他の薬剤が60日処方されている場合でも、処方制限のある睡眠剤・安定剤は30日分までしか処方することが出来ません。
そのため、睡眠剤を毎日服用している場合は、30日後にもう一度病院を受診して処方してもらわなければなりませんが、医師の配慮により「1回量を2倍量」にして処方することもあります。
そうすることで、窓口でお渡しする睡眠剤・安定剤も薬剤合計が60日分と同じになり、つじつまを合わせてくれているんだね。
そうなんです!つまり、以下のような感じになります!
例)医師は、薬剤Aを1日1回 寝る前 1回2錠/30日分で処方する(薬剤Aは2錠×30日分で合計60錠となる)
➡薬剤師は、患者さんには1日1回 1回1錠/60日分(薬剤Aは1錠×60日分で合計60錠となる)と説明してお渡しする。
お薬代は、処方せん記載通りに計算しなければいけない為、薬局でお渡しする明細書には、薬剤Aは1日1回 寝る前 1回2錠/30日分として取り扱いしたように記載されています。
しかし、薬の説明書やお薬手帳、薬袋には1日1回 1回1錠/60日分と訂正されて記載されているはずです。
睡眠剤・安定剤の投与日数制限に対する個人的なぼやき
睡眠剤・安定剤には投与日数制限が定められているのですが、微妙な慣習が医療界には存在しているのです。
向精神薬の投与制限はこちらが参考になりますよ!
(出典:管理薬剤師.com)
それは、投与日数を医師が細工して処方出来てしまうというものなのですが…。
”厚生局” と言って医療機関を指導・監督する組織があるのですが、この厚生局が、なんと ”投与日数制限のつじつま合わせ” を認めているのです。
そのため、ある意味グレーゾーンであるけれども ”合法” なのです。
しかし、毎回医師に処方内容の疑義照会を行い、その旨を処方せんに記録し、薬歴にも記録するように指導されます。
この作業は薬剤師にとって結構な時間と労力が割かれてしまうのです…。
それならば、グレーゾーン回避のためのつじつま合わせ作業(薬袋などの訂正・医師への疑義照会)をするようなことはせずに最初から投与日数の制限の方を変更すればよいのではないかと思ってしまいます。
医療事故(処方せん通り医師は1回2錠で服用して欲しい場合もあり薬剤師が医師の意図とは異なる用法で服薬説明をしてしまう・薬袋・薬情の訂正忘れによる誤服用などが起きてしまう)を防ぐためにも、最初から投与日数制限を60日分に変更して、つじつま合わせは一切認めないとした方が、医療提供者・患者さんにもメリットがあると思うのですが…。
※薬局のパソコンには処方せん通りに入力しなければならないという決まりがあるため、薬剤師はパソコン入力後に正しい服用法に薬袋・薬情を毎回訂正をかけているのが内部事情なのです。
まとめ
睡眠剤・安定剤は、使い方を間違えるとデメリットの方がかなり大きくなってしまします。
日本は諸外国に比べて睡眠剤・安定剤の処方量がかなり多いという統計もあり、安易に使い過ぎているという実態もあります。
正しい使い方をすれば、様々なつらい状態を改善してくれる素晴らしいお薬でもあります。正しい使い方でお薬のメリットを最大限に引き出しましょう!
睡眠剤・安定剤の安易な使用だけは避けてくださいね!
「宮崎県川南町」に位置する「ほどよい堂」において、「薬剤師×中医薬膳師×ペットフーディスト」として、健康相談を行っています。
代表の河邊甲介は、漢方医学、薬膳、そして腸活を組み合わせた独自のアプローチで、個々の健康に寄り添います。
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