狭心症の発作時に使用される薬剤の「ニトロペン®」ですが、この薬剤は使い方が特徴的です。
通常のお薬は水で飲みこむことがほとんどなのですが、「ニトロペン®」は舌下錠といって、ベロの裏側にお薬を含ませることでお薬を吸収させ、飲み込むことはしません。
どうしてそのような使い方をするのかな?
「ニトロペン®」はお水で飲みこんでしまうと効果が全く現れないからなのですが、今回はその理由などについて説明していますね。
「ニトロペン®」は内服したら効果は無いって本当⁉
『ニトロペン®(一般名:ニトログリセリン)』は、心臓の血管を広げる作用があり ”狭心症” の治療薬です。
『ニトロペン®(一般名:ニトログリセリン)』は舌下に置いて使う薬で、このような使用法をする薬剤を ”舌下錠” といいます。
『ニトロペン®(一般名:ニトログリセリン)』は普通の薬のように飲みこんでしまうと、全く効果が得られないのです。
もし誤って飲み込んでしまった場合には、改めてもう1錠を舌下に置いて使用する必要があります。
間違って飲み込んでしまっても、効果が出ないだけで大事には至りませんので心配はありません!
狭心症とはどのような状態なの?
心臓には心筋に酸素や栄養素を供給するために ”冠動脈” という血管が表面に張り巡らされています。
冠動脈には左冠動脈、右冠動脈があり、左冠動脈はさらに前下行枝、回旋枝に分かれるため大きく3本の枝に分かれます。
動脈硬化などが原因で冠動脈に狭窄が生じると、心筋に十分な血液が供給できなくなります。
その結果、心筋が酸素欠乏状態になってしまいます。
このような疾患を『狭心症』といいます。
(引用:日本冠動脈外科学会)
狭心症について分かりやすく説明している動画がありましたので紹介しますね!
『ニトロペン®』を飲み込んだ場合どうしたらいいの?
『ニトロペン®』は舌下に置いて使うことで、薬を直接心臓へ届けられるように設計された薬です。
錠剤を飲み込んでしまうと、お薬はまず消化管に到達してから血液中に吸収されます。
その後、心臓に届く前に肝臓を通ります。
このとき、『ニトロペン®』の有効成分は一度肝臓を通っただけで、そのほとんどが分解されてしまうのです。
その結果、お薬の成分は心臓に届かないため、心臓の血管を広げる効果も全く期待できません。
お薬の説明書である添付文書においても ”ニトロペン®は内服では効果がない” としっかり明記されています。
肝臓の働きとは?
口から摂取したものが吸収され最初に肝臓を通るのは、毒物などを摂取してしまった際、脳や心臓といった重要な臓器に毒が回ってしまう前にまず解毒・分解し生体を守るためなのです。
そのため、服用した薬も同様に肝臓を通ってから全身へ巡り、効果を発揮することになります。
このように、薬が最初に肝臓で解毒・分解されることを ”肝臓の「初回通過効果」” と呼びます。
”舌下に置く” というお薬の投与方法は、この「初回通過効果」を回避し、薬を直接心臓に届けるための工夫なのです。
同様に、皮膚に貼りつける方法である経皮投与でも、この「初回通過効果」を回避することができます。
硝酸薬のテープ剤である『バソレーターテープ®(一般名:ニトログリセリン)』などが、経皮投与における狭心症薬として使用されています。
『ニトロペン®』はもともと追加投与ができる薬なのです
『ニトロペン®』は、初回の1錠で効果が得られなかった場合、追加であと1~2錠を追加投与できることが添付文書でも定められています。
そのため、間違って飲み込んでしまった場合に追加でもう1錠を使用したとしても、そのことで薬の副作用が起きてしまうようなことは無いのです。
ただし、合計3錠使っても症状が改善しない場合は、そもそも狭心症ではなく、心臓の血管が完全に詰まって壊死してしまう ”心筋梗塞” である可能性も考えられます。
『ニトロペン®』を合計3錠使用しても症状が改善しない場合は、ただちに主治医または救急に連絡するようにしてください。
『ニトロペン®』を使用する際の薬剤師としてのアドバイス!
先述の通り、飲み込んでしまった場合は『ニトロペン®』の効果が期待できません。
このとき注意すべきは、”あまり効果がない” ではなく、”全く効果がない=無効” ということです。
そのため、躊躇せず『ニトロペン®』を追加投与する必要があります。
また、『ニトロペン®』は常備薬として長期保管していることも多く、使用期限が切れているケースも多く見受けられます。
定期的に薬の使用期限については確認するようにしましょう。
『ニトロペン®』の使用期限は薬の包装に記載してあります。
また、『ニトロペン®』は錠剤が砕けやすいために、財布やカバンなどの中に保管する場合には、圧力がかからないようにする必要があります。
「宮崎県川南町」に位置する「ほどよい堂」において、「薬剤師×中医薬膳師×ペットフーディスト」として、健康相談を行っています。
代表の河邊甲介は、漢方医学、薬膳、そして腸活を組み合わせた独自のアプローチで、個々の健康に寄り添います。
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