「プラセボ効果」「ノセボ効果」ってあまり聞きなれない言葉だけど、どんな意味なの?
米津玄師さんの曲に「PLACEBO」という楽曲があるのですが、こちらの方で『プラセボ』という言葉を聞いたことがある人も多いかもしれませんね。
米津玄師×野田洋次郎 コラボレーション楽曲「PLACEBO + 野田洋次郎」は、米津玄師さんの新アルバム『STRAY SHEEP』に収録されています!
Cメロの部分の歌詞に「プラゼボ」的な意味が込められているね!
「気の迷いじゃない 嘘じゃない想い
思い込みじゃない 嘘じゃない想い
気の迷いじゃない 嘘じゃない想い
思い込みじゃない 嘘じゃない想い
今だんだん恋になっていく ときめいていく
思いがけぬ とんだランデブー
今どんどんハイになっていく 洒落込んでいく
甘い罠に やられていく 落ちていく」
今回は「病は気から」と言われるように、精神的な作用が実際に身体の症状として現れてしまう現象である「プラセボ効果」「ノセボ効果」について深掘りしてみますね!
『プラセボ効果(Placebo)』と『ノセボ効果(nocebo)』は、日常診療でも、臨床試験でも、インフォームド・コンセントの過程でも、公衆衛生キャンペーンでも、様々な場面で起こり得る作用なのですが、この効果について次のように研究発表されていました。
患者が医師を信頼しており、良好な関係があって、オープンな会話が可能であると、痛みなどの症状が和らぐことが示されています。この作用を「プラセボ効果」といいます。
一方で、気にかかる情報、間違った思い込み、悲観的な予測、好ましくない経験、流布される否定的なメッセージ、好ましくない治療環境は、副作用の増加に関係し、治療効果を減じる可能性があるとされ、医薬品由来の非特異的な副作用(間欠的で、特定の患者のみに認められ、用量依存的ではなく、再現性がない)は少なからず見られるというのです。この作用を「ノセボ効果」といいます。
米国Maryland大学のLuana Colloca氏らは、これらの効果と関係する患者特性や、作用がアウトカムに及ぼす影響などを調べた論文をレビューし、「プラセボ効果を高めノセボ効果を抑制する戦略」が有用であると報告しています。
これらの作用は単なる気分の問題ではなく、プラセボ効果は内因性オピオイドや内因性カンナビノイド、ドパミン、オキシトシン、バソプレシンなどの放出を引き起こしていることが示され、実際に科学的にも人体のなかで変化が起きていることが確認されています。
痛みの増減にしても決して気分の問題では無いのです。
論文はNEJM誌2020年2月6日号に掲載されています。
プラセボ(Placebo)効果とはどのようなものなの?
プラセボ(偽薬)とは、本物の薬と同様の外見、味、重さをしているが、有効成分は入っていない偽物の薬のことを指します。
新しくお薬を開発する際に医薬品の有効性は二重盲検対照試験が行われ、有効成分を含む実薬群と有効成分を含まないプラセボ群の効果の差から判断されています。
偽薬の成分として使用されるものは、薬理的影響のないブドウ糖や乳糖が使われています。
偽薬というと偽物というマイナスイメージが強いと思いますが、Placeboはラテン語で「私は喜ばせる」の意味なのです。
京大薬学系大学院を修了、製薬会社の研究員として薬品の開発を手がけた「水口直樹」氏が、【プラセボ製薬】という会社を立ち上げて偽薬を売っているんだって。
その理由は水口直樹氏によると ”それは偽薬が効くから” ということなんだって。
水口直樹氏は、「偽」という漢字の成り立ちを「人の為(ヒトノタメ)」と解釈し、ニセモノ“なのに”やニセモノ“だけど”ではなく、「ニセモノ“だから”できること」と肯定的に捉えるこの言葉をコーポレート・スローガンに掲げています。
【プラセボ製薬】は次のように様々な媒体でも取り上げられています!
- TBS『背筋も凍るほわ〜い話』
- NHK総合『ガッテン!』
- 『読売新聞』夕刊
ノセボ(nocebo)効果とはどのようなものなの?
偽薬によって望まない副作用(有害作用)が現われることを、ノセボ効果 (ノシーボ効果、反偽薬効果、nocebo effect) と呼んでいます。
YouTubeチャンネル【心療内科医たけお 心身健康TV】でもノセボ効果について現役診療内科医師が情報発信されていました!
プラセボ効果と疼痛(痛み)の関係性を示した研究結果とは⁉
プラセボ効果に関連して、疼痛に関する研究があります。
この研究【慢性腰痛患者における不安回避行動と痛みの予測】では、慢性腰痛を訴えている50人を対象に、「エクササイズ器具を用いて足の屈曲運動をしてもらう」というものです。
被験者に対して「この運動で痛みが増加することはない」と説明した群と「この運動で、わずかに痛みが増加することもある」と説明した群に分け研究が開始されています。
その結果、「痛みが増加することはない」と説明された群では疼痛が減り、「わずかに痛みが増える」と説明された群では痛みが増加することが示されたのです。
痛みの感覚は、心理的なものが影響しているのが分かる結果だね!
NHK放送の『ガッテン!』で真相解明!お笑いコンビ「タカアンドトシ」のトシさんにまつわる “あるウワサ” が話題に!トシさんの顔を見ると生理の痛みが和らぐって本当⁉
2021年6月16日(水)放送の『ガッテン!』において、お笑いコンビ「タカアンドトシ」の【トシさんの顔を見ると生理の痛みが和らぐ⁉】という女性が急増しているという内容がSNSで噂になっているというものでした。
この噂が、いわゆる「プラセボ効果」ではないのか?という実証実験が番組内で行われていました。
トシさんの顔を見ると生理の痛みが和らぐなんて「どういうこと???」って感じだよね。
普段からトシさんの顔を見ることで生理痛のつらさをしのいでいるという方に協力してもらって実証実験を行っていました。
『ガッテン!』 内の実験によると、脳の機能活動がどの部位で起きたかを画像化するファンクショナルMRIを用いると、被験者の脳の「側坐核(そくざかく)」といわれる痛みに関係する部分が活発に反応していることが確認されていました。
「側坐核(そくざかく)」が反応するとどうなるの?
「側坐核」が反応することによって、脳内に「オピオイド」と呼ばれる強力な鎮痛物質が分泌され、痛みが和らいだのではないかと考察されていました。
海外のプラセボ効果を研究している学者のコメントでは、側坐核を反応させるためには『期待感』があることが大切なポイントだということでした。
『ガッテン!』 内の実験で、【トシさんの顔を見ると生理の痛みが和らぐ⁉】とい噂を全く知らない人で同じ実験をしたら、トシさんの顔をみても「側坐核(そくざかく)」は全く反応していないという結果になったのは納得だね!
噂を聞いてそれを純粋に信じて期待感を持つことが出来る性格の人は、実際に痛みが和らぐということになります。
結局は、おまじないを純粋に信じることができる人は幸せってことになるのかな…。
スタチン系薬剤(脂質異常症に使用される薬剤)服用時に起きる筋肉痛などの有害事象とノセボ効果の関連を研究した結果とはどのようなものなの?
スタチン系薬剤(脂質異常症に使用される薬剤)に関連する筋肉痛などの有害事象は、その多くが「ノセボ効果」によるものではないかと言われています。
ただし、実際に筋肉痛をともなう「横紋筋融解症」という薬の副作用が一定の割合で発生しているのも事実です。
そのため、薬剤師は筋肉痛が起きる可能性があると副作用も説明しておかなければならないのですが、この説明をすると必ず一定の割合で「ノセボ効果による筋肉痛」によって、お薬の副作用が出たと勝手に患者さんが判断して薬を飲むのをやめてしまうことがあります。
そうなると、本来受けるべき薬による恩恵が受けられなくなってしまうのです。
これらの研究結果は薬剤師にとっても重要な意味を持っています。お薬の副作用の説明の仕方一つで、コンプライアンスに大きな影響が出てしまうのです。
スタチン系薬剤(脂質異常症に使用される薬剤)に関連する筋肉痛などの有害事象研究論文はこちらです。
薬剤師さんはお薬の副作用を説明する加減が難しそうだよね。
そうなのです!
薬剤師に対して ”患者さんに副作用の説明はしないように” と高圧的な態度で指示してくる医師も中にはいますしね…。
患者さんがお薬を飲むのを拒否するのは薬剤師が副作用を説明したからだというのですが、それなら処方している医師が現在の病状に対して薬の服用の必要性をしっかり説明して欲しいという気持ちにもなります。
一部は薬剤師の説明の仕方が不十分だったかもしれませんが…。
このようなことは、医療業界における医師を頂点としたヒエラルキー構造の最たるものですが…。個人的にはどうしたものかと思ってしまいます…。
このように薬剤師は副作用の説明に対してジレンマに悩まされることがよくあるのです。
お薬の副作用について説明しなければならないとなっているものの、個々の患者さんによって同じ言葉でも捉え方は千差万別なのです。
どのように伝えても副作用を極端に怖がってしまうゼロリスクを信念とする患者さんは一定数存在するのも事実なのです。
まとめ
臨床においては、薬理活性成分の含まれないプラセボ(偽薬)を投与して、症状が改善する場合がよくみられます。
特に痛みや下痢、不眠などの症状に対しては、偽薬にもかなりの効果があると考えられており、これには暗示(おまじない)のような心理的効果、自然治癒などが影響しているとされています。
ある意味、患者さんをダマしているのですが鎮痛剤・睡眠剤などを自分勝手に多量に服用すれば、生命にもかかわる副作用が出てしまうのです。
実際問題として、プラセボ(偽薬)を使用して、つらい症状が改善すればお薬の過量投与による副作用を回避することができて、患者さんも苦痛から解放されるので一石二鳥です。
実際の医療現場では、プラセボ効果を最大限利用し、ノセボ効果をどれだけ減らせるかが治療のカギになると考えられます。
現在のように誰もが簡単にインターネットを使って専門家と同じ情報を手に入れられる時代では嘘も方便的手法は難しくなってしまいました。
今のお薬には包装や錠剤本体に薬剤名・薬剤コードなどが書いてあるから、インターネットで簡単にどんな薬か調べることが出来ちゃうもんね。
治療効果を高めるためには、医師を含めた医療従事者やお薬そのものを、どれだけ患者さんに信頼してもらえるかが最終的には一番重要なカギになってくるのでしょうね。
プラセボ効果は効果を期待する患者の気持ち、ノセボ効果は副作用を懸念する患者の気持ちに由来するとされます。
「宮崎県川南町」に位置する「ほどよい堂」において、「薬剤師×中医薬膳師×ペットフーディスト」として、健康相談を行っています。
代表の河邊甲介は、漢方医学、薬膳、そして腸活を組み合わせた独自のアプローチで、個々の健康に寄り添います。
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